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国外転出時課税制度 「出国」した人で納税猶予を選択したのは、95人

2019.10.15

国外転出時課税に係る納税猶予制度の適用を受けた件数が、明かになりました。

国外転出時課税制度とは、国内で行われる有価証券の売買なら本来その譲渡益に対して課税されますが、有価証券の譲渡益に対し非課税としている外国へ出て、そこで有価証券を売却するなどして譲渡益に対する課税を逃れる事例があり、国際的な協調でこれを防ぐために新たに作られたものです。

具体的には、合計で1億円以上の所定の有価証券等を保有する資産家が対象者となる税制です。課税が問題になる場面は、次の3場面です。

①居住者が、国外へ出て国内に住所が無くなる(いわゆる「出国」)場合②居住者の保有する有価証券等を国外にいる子弟等(非居住者の親族等)へ贈与する場合
③居住者の死亡で有価証券等が国外にいる子弟等(非居住者の親族等)に相続・遺贈される場合

この時、保有する有価証券等の譲渡があったものとしてその含み益に譲渡所得税が有価証券等の保有者である居住者または被相続人に課税されるものです。

このため、納税猶予の制度が設けられています。猶予期間は5年間で、延長の届出をすると最高出10年間、猶予できます。たとえば資産家本人が国外転出する場合、出国するまでに「納税管理人」を決めて税務当局に届出をしておくと、国外転出時課税制度で負担すべき税額の納税を猶予する制度が利用できる仕組みです。

明かになったのはその適用状況で、国税庁によると平成30年6月末時点の納税猶予の継続管理件数は次の通りです。

課税の場面件数猶予税額
①出国 95件 約262億円
②贈与 18件 約5億円
③相続 5件 約4億円

資産家本人が「出国」に際して納税猶予を選択するケースが多いことがわかります。マネージメント能力の高い積極的な資産家像が浮かび上がってきます。

[ 遠藤 純一 ]

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