Topics
TACTトピックス

建物の評価額で「損耗」が認められたケース 登録免許税が4割弱還付

2019.09.24

建物の固定資産税評価額(台帳価格)は、固定資産税の課税標準の基礎となるだけではありません。相続税の財産評価の基礎になります。また不動産取得税のほか登録免許税の課税標準の基礎にもなります(登免税法附則第7条)。

ところで、固定資産税の賦課期日(1月1日)の建物の固定資産税評価額の算定に当たり、その時点での建物の著しい「損耗」が見落とされていた場合には、「損耗」を固定資産税評価額に反映させるべく、計算が修正されることがあります。

固定資産評価基準では、天災、火災その他の事由により、古びることによる経年減点補正率によることが適当でないと認められる場合は、損耗の程度に応ずる減点補正率(以下「損耗減点補正率」という。)によることができる仕組みだからです。

最近、それが登録免許税に間接的に波及する事例が明らかになりました(国税不服審判所平成31年2月20日)。裁決書によると、A社は、大規模な鉄筋コンクリート造6階建ての建物を平成27年5月に購入し、登録免許税を支払っていました。

ところが、この建物は5年以上前に内装などが撤去され、建物が傷んでいる状況だったため、A社は28年4月に管轄の市町村の評価庁に申出ました。評価庁は現地調査を実施し、同年5月に建物の評価額を下方修正することを通知してきました。具体的には経年減点補正率0.6640を改め、損耗減点補正率0.2888を適用し、28年度の台帳価格となる固定資産税評価額を下方修正したということです。

A社はこれを受けて、登記所に対し「登記の目的となる不動産について、台帳価格が付された後に損壊等の特別の事情がある」場合には事情を考慮した課税標準とするとの規定(登免税法施行令附則4項)により過大納付があるから税務署長を通じて還付するよう求めました。しかし登記所は聞き入れなかったため国税不服審判所で争いのなったものです。

この裁決のハイライトは、登録免許税の課税標準は登記の時の時価であることが大原則なため、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合は、他の方法により求めた不動産の価額を課税標準にできると解することが相当と判断された点です。

具体的な検討では、国税不服審判所は損耗の事実関係について次のように整理しました。

1、現地確認でも、「壁及び柱の内装は撤去され下地がむき出しになっていること、床の石張りは所々剥がれていること、天井についても下地がむき出しになっていること、及び配線等は一部切断されている箇所が存することが確認された」こと。

2、建物を管理している組合の理事長の話でも、客観的に平成27年以前から「損耗」が生じていたことが認められること。

国税不服審判所は、平成27年の台帳価格算出に当たり乗じられていた経年減点補正率0.6640に代え、平成28年の損耗減点補正率0.2888を採用した課税標準とすべきと判断し、還付を認めています。なおA社の「台帳価格が付された後に損壊等の特別の事情がある」ことを基にした主張は採用していません。

建物の評価を減額するには、減額の具体的理由が問われているといえそうです。

[ 遠藤 純一 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。