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定借の前払地代は債務控除の対象になるか 相続直前に底地贈与で税金トラブル

2019.09.06

定期借地権の底地の相続をめぐり税金トラブルになっていたケースが明らかになりました。

裁決書によると、トラブルは相続直前に定期借地権が設定された土地を被相続人から相続人が贈与を受けたことに始まります。

土地は、社会福祉法人が介護施設を所有するため、51年間の定期借地権で貸す契約がなされたものでした。前払地代は契約上、合計3,800万円分前払いを受け、当初10年間の地代に充当される予定でした。契約は平成23年に締結、平成24年10月末までに前払地代全額が被相続人指定の口座に振り込まれました。

被相続人は亡くなる直前の平成24年に2人の相続人に定期借地権の設定された土地の半分ずつを贈与しました。直後に、被相続人は社会福祉法人、相続人らとともに定期借地権設定契約につき、貸主、地代の振込先等の変更をしたためた「覚書」を交わしました。

当初の相続税申告で相続人らは、前払地代を社会福祉法人に返還する債務について、被相続人が相続の開始日において負っていた債務であり、相続人らが1,900万円ずつ承継したとしていましたが、税務署からは「前払地代は本件借地権設定契約の存続を前提とする限り返還を要しないから、前払地代債務は確実と認められる債務ではない」として更正処分等をしたことから、トランブルになったものです。

相続人は審査請求し、変更の覚書により賃貸人の地位・前払地代債務は被相続人から請求人らに引き継がれたため、相続開始日において、被相続人は、請求人らに対して前払地代として被相続人が既に受領した3,800万円を引き渡す債務を負っていたと主張を変えました。

国税不服審判所(以下審判所という)は、貸主の地位等の変更について、最高裁昭和38年1月18日第二小法廷判決を引き合いに「賃貸借の目的となる不動産が譲渡され、賃貸借の賃貸人の地位も引き継がれた場合、引き継がれる賃貸借の内容には、賃料の前払がされたことも含まれるものと解される」として、相続人らは、「被相続人から、前払地代のうち未経過分を社会福祉法人に返還する前払地代に関する権利義務を引き継ぐ一方、被相続人はその権利義務を負わなくなったものと認められる」としました。

しかし審判所は「新賃貸人が旧賃貸人から前払賃料に関する権利義務を引き継いだ場合に、旧賃貸人が、新賃貸人に対し、前払賃料として賃借入から受領した金員を引き渡すべきことを規定した法令はない」ため、被相続人が、当然に、相続人らに対し、前払賃料として受領した金員を引き渡す債務を負うものではなく、被相続人は、相続人らとの問で金員を引き渡す旨の合意がない限り、相続人らに対し、債務を負わないものと解される」としました。

具体的な検討では、「合意の存在をうかがわせる事情は見当たらない」として相続人の主張を退けています。

[ 遠藤 純一 ]

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