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個人事業税がかかる不動産貸付業の規模で争い 自家用でも償却しているなら「貸室扱い」

2019.08.26

都道府県税の1つである個人事業税は、個人事業主が所定の第1種事業から第3種事業を営んでいる場合に納税義務が発生する点に特徴のある税制です。

このうち、不動産貸付業は、「第一種事業」の1つとして列挙されています(地法72条の2⑧)。「不動産貸付業」は、「継続して、対価の取得を目的として、不動産の貸付けを行う事業」をいい、規模の認定は「所得税の取扱いを参考とする」が、「アパート、貸間等の一戸建住宅以外の住宅の貸付けを行っている場合においては居住の用に供するために独立的に区画された一の部分の数が(中略)10以上であるものについては、不動産貸付業と認定すべきものである」とされています(「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年4月日総税都第16号総務大臣通知))。

この不動産貸付業の認定をめぐっては、これまでもたびたび、納税者と課税当局が争う場面が見られました。というのも、認定に関する定めは都道府県の条例やその運用を解釈した課税事務提要などで明らかにされていますが、ローカルな基準も含まれているからです。

今回、取り上げるトラブルは東京都の事例です。トラブルのもとになったのは、納税者側で自家用として使っていると認識していた「空き室」です。東京都は、この空き室につき「貸室」と認定し、全部で10室になることから「不動産貸付業」にあたるとして事業税を課税したため、納税者が審査請求を行い、争いとなったものです(東京都平成31年2月21日裁決)。

裁決書によると、東京都は次の事実関係を確認し、課税に至ったということです。

  1. 職員が所得税の申告内容確認のため申告書や収支内訳書を閲覧したところ、収支内訳書の減価償却費の計算の表の「減価償却資産の名称等(繰延資産を含む)」の欄に「貸店舗」及び「貸部屋」と記載があり、 この不動産の貸付割合は「100.00」%と記載されていたこと。
  2. 職員が現地調査を行ったところ、外観及び郵便受けの目視により、1階の店舗3室並びに2階3室、3階3室及び4階1室の住宅部分の合計7室、総合計10室の独立的区画を有する1棟の建物であることを確認したこと

しかし納税者は、この不動産の4階の1室が空き室であり、自家用として利用しているから「不動産貸付業」の規模に満たないと反論していました。

諮問を受けて審理にあたった東京都の審査会は、東京都の課税事務提要では「貸付不動産の室数等の算定に当たっては「空室等であってもこれを含めて算定する。空室等が貸し付ける目的で設けられたものであるかどうかは、当該空室等が減価償却されているかどうかにより判定して差し支えない。」としている」ことを確認。

また審査会は、個人事業税の納税義務者が前年分の所得税につき確定申告書を提出した場合には、事業税の申告がされたものとみなすとされ(地法72条の55の2①)、その場合、確定申告書に記載された事項のうち事業税の申告に必要な事項に相当するもの及び確定申告書に附記された事業税の賦課徴収につき必要な事項は、事業税の申告がされたものとみなすとされている(同法②、③)ことも確認。

このため審査会は、この事案につき東京都が適正に個人事業税を課したものと判断しています。

トラブルを防ぐためには、ローカル又は細かい定めなどがないかどうかについて課税当局に確認することが必要です。

[ 遠藤 純一 ]

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