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贈与税・配偶者控除の活用で住宅を贈与 忘れがちな不動産取得税にご用心

2019.08.13

改正民法で20年連れ添った配偶者へ贈与・遺贈された現物の住宅については、遺産分割の相続分を計算する際に、原則として特別受益として扱わない、配偶者の取り分がそれだけ増やせる規定があります。これは今年7月からの施行です。

残された配偶者の生活を守るという考えから導入されたもので、贈与税の配偶者控除と同じ考え方に立つ制度です。このため、改めて贈与税の配偶者控除の適用を考える人が今後増えることも予想されます。

「贈与税の配偶者控除」とは、20年以上連れ添った夫婦間の贈与で認められている優遇税制として知られている制度です。住宅(居住用不動産)やそれを取得する金銭をもらった場合、贈与税の計算上、贈与された住宅の評価額や金銭などの課税価格から基礎控除110万円のほかに最高2,000万円控除できるとい
うものです。

ただし気を付けたいのは、現物の住宅を贈与する際、ケースによっては不動産取得税がかかる場合が出てくることです。もちろん、不動産取得税を定めた地方税法には、贈与税の配偶者控除を適用して贈与された現物の住宅について、不動産取得税を非課税にするといった規定は見当たりません。したがって、こうした贈与による住宅の取得についても、原則として課税されることになります。

不動産取得税では、所定の規格を満たす住宅を取得した場合には、価格(適正な時価=評価額)から最大1,200万円を控除できる「住宅家屋の課税標準の特例(地法73条の14)」の適用があります。また敷地についても、「住宅用土地の減額(地法73条の24)」の適用もあります。中古住宅の贈与では、床面積が50㎡以上240㎡以下であり、昭和57年1月1日以後に建築されたものであるか、新耐震基準に適合するものとして証明されたものであることが要件になります。住宅家屋の控除額は新築当時の控除額となります。大方は、住宅家屋の固定資産税評価額が経年減価により逓減しているため、税額が発生するケースは多くはないでしょう。

なお、贈与する住宅の床面積が、上記の要件を満たすものであっても、建築時期が昭和57年以前の場合で、耐震基準不適合既存住宅を取得したものとされた場合では、取得から6か月以内に耐震改修をし、耐震基準に適合したことの証明を受けることで、その住宅の新築当時の「住宅家屋の課税標準の特例」の控除額に税率を乗じた金額を税額から控除することが認められる仕組みです(地法73条の27の2)。この場合、逆に改修をしなければ、この制度の適用はないのです。実際、贈与税の配偶者控除の適用を前提とした現物の住宅の贈与で、上記の耐震基準を満たさなかったばかりに、不動産取得税が課税され、トラブルになった事案があります(東京都裁決平成31年3月6日)。

20年連れ添った夫婦間で贈与する住宅が古い場合には、不動産取得税が課税されるケースがあることは、頭の片隅に置いておきましょう。

[ 遠藤 純一 ]

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