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2019.03.04申告期限守れなかったときに問われる客観的な事情とは? 贈与税巡る裁判例に学ぶ

確定申告といえば贈与税もこの時期が申告の最盛期です。贈与税は財産をもらった人が、原則として贈与のあった年の翌年3月15日までに申告することになっています。もちろん、申告期限を守れなかったら、原則として無申告加算税というペナルティが付けられます。

ただし申告書の提出がなかったことについて、「正当な理由」がある場合には、無申告加算税は賦課されません。この「正当な理由」とは、「災害、交通・通信の途絶その他期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由」のことを指します(国税庁HP,相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針))。

このことに関連する裁判の判決が最近、東京地裁で言い渡されています(平成31年2月1日)。

判決によると、問題になったのは事業承継に絡んだ非上場会社の株式の贈与です。納税者Aさんは平成26年に父親からその株式の贈与を受けました(本件贈与といいます)。ところがその年末、父親が他の会社関係者とともにAさんに対し株式を贈与したことはないなどと主張して、Aさんと株式の発行会社などを相手に、父が株式を有する株主であることの確認を求める等の訴訟を東京地裁に提起したというのです。

この父から提起された裁判は平成28年2月に判決が下り、確定しました。その内容はAさんへの株式の贈与は有効に成立したと認められるなどとするものでした。贈与された株式について贈与税の申告は、本来平成27年の3月16日までにすべきものでしたが、Aさんは平成28年6月になって「期限後申告」をしました。というのもAさんは、父から訴えられたことについて、次のように考え、「このような状況において、贈与税の納付を強制することは、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に当たる」と考えたからです。

1、父は贈与の撤回を求めるもので、権利移転が認められる判決が確定すれば贈与の効力が確定したと考えられる。
2、贈与の対象となった非上場株式は換金性に乏しく、贈与税を支払うには金融機関から借入をするしかなかったが、父方の訴訟提起があったため借入できなかった。

しかし税務署は、平成28年7月に無申告加算税の賦課をしたことからAさんは無申告加算税の賦課決定取消を求めて争いとなったものです。

裁判所は過去の過少申告加算税を巡る最高裁平成18年4月20日判決などから「国税通則法66条1項ただし書にいう「正当な理由」があると認められる場合とは、法定申告期限内に申告書が提出されなかったことについて真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、(中略)納税者に無申告加算税を航課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である」と解釈。父から提起された裁判があったとしても「ひとまず贈与税の申告書を提出し、後に判決に於いて贈与が無効とされたときに、更正の請求をすることが可能であるから、このような場合に期限内申告書の不提出に対し無申告加算税を賦課しても、当該贈与が無効であるか又は有効である可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出しなかったというような真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情が存在することを納税者が主張立
証しない限り、当該納税者にとって不当又は酷になるということはできない」としました。

Aさんのケースについて裁判所は、平成27年中に行われた株主総会で贈与を受けた株式をベースとする議決権を行使していたことを指摘、Aさんが「法定申告期限である平成27年3月16日までの時点において、本件贈与を有効であると認識していたことは明らかであり、本件贈与が無効であるか又は有効である可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識していたとは認められない」としてAさんの主張を退けています。

[ 遠藤 純一 ]

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