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居住の事実は「くみ取り」便所まで マイホーム3,000万円特別控除の適用巡り裁決

2019.02.25

マイホームを譲渡した場合の3,000万円特別控除(現行=租税特別措置法35条1項)の適用に関し、売却した住宅に本当に納税者が住んでいたかどうかが、問われるケースは少なくありません。

最近でもこうした問題が争われた国税不服審判所の裁決がありました(平成30年3月5日)。

3,000万円特別控除は、住宅を売却して利益が出た場合、譲渡所得の計算上譲渡益から最高3,000万円を控除する特例のこと。対象となるのは、原則として所有者として現に住んでいるか、住まなくなってから3年の年末までにその住宅を売却したケースです。

裁決書によると、問題になった住宅は、納税者Aさんが平成22年8月まで両親から相続した住宅と敷地3筆(以下本件住宅という。)でした。家屋は父親が建てたものですが、その後母親が建てた別の住宅(乙)に転居しましたが、直後にAさん本人が住宅(甲)を新築し転居していました。Aさんが本件住宅に舞い戻ったのは母から相続を受けた平成22年9月ごろで、母を介護していた住宅(乙)や住宅(甲)とも行き来していました。平成25年になって不動産業者に仲介依頼し、Aさんはその4月末までに本件住宅の家屋を取り壊しで売却し、3,000万円特別控除の適用をして確定申告したといいます。

しかし、税務署側がAさんは本件住宅に居住していなかったとして、3,000万円特別控除の適用を否認したことから争いとなったものです。

国税不服審判所は3,000万円特別控除に適用対象となる「居住の用に供している家屋」について、「本件特例の適用を受けるために、短期間臨時にあるいは仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点として利用している家屋をいうものと解される」とのこれまでの解釈を確認。

その上で、居住の実態を確認するため税務署が調べた事項を次のように整理しました。

  1. 電気については平成22年11月9日に供給が開始されているものの、本件不動産売買契約の締結までの聞の使用実績は全くない
  2. 水道については給水契約も締結されておらず、いずれも本件不動産売買契約の締結から本件家屋を取り壊すまで2か月間の一時的な使用が認められるだけであった
  3. 入浴や洗濯は、甲家屋又は乙家屋で行っている

さらに、「本件家屋にはくみ取式の便所があったと認められるが、本件家屋を取り壊す時以外にくみ取りが行われた事実はない」と、くみ取り便所のくみ取りまで調べていました。

こうしたことから、審判所は「本件家屋は、請求人が真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点として利用していたものとは認められない」としてAさんの言い分を退けています。

臭いものには蓋をせず、事実を追求するその執念はさすが税務当局の面目躍如といったところでしょうか。

[ 遠藤 純一 ]

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