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公社管理の民間賃貸住宅を相続した時の注意点

2018.06.18

1、共益費名目でもらうお金は不動産所得になる収入

賃貸不動産のオーナーなら、アパートなどの共同住宅の共益費名目で賃借人からもらうお金は、不動産所得になる収入と心得ていると思います。

共益費とは、たとえば共同で利用する水道や電気の費用、共用部分の掃除費用、共用部分の伝統の交換費用などの諸費用で出費するものです。しかし、後で実費精算するのが面倒ということで、共益費として、あらかじめいただいておいて、オーナーや管理人が必要に応じ、上記費用に充てて精算していく仕組みです。オーナー側の経理では、共益費としていただいたものは不動産所得の収入となり、共用部分に係る諸費用が必要経費となっていくことになります。

2、公社借上げの民間賃貸住宅を相続して、借上・管理契約を終了したら

優良賃貸住宅として地方の住宅供給公社などが借り上げて、入居者に対し家賃補助等を行う制度が以前ありました。平成28年度末現在でも、この制度で借り上げられている民間賃貸住宅がおよそ1万9千戸あると、いいます。
東京都の場合は「都民住宅」として知られている制度です。

このような公社などの借上げで民間賃貸住宅が管理されている場合、入居者からいただく共益費は、いったん公社が受け取ります。ただし会計の仕方が独自です。公社グループには公社の「会計基準」があり、公社の方で預かり金として処理し、管理上必要が生じた場合、公社の中で精算し残りはプールする仕組みです。この場合、オーナーの不動産所得には、この共益費は計上しません。

ところが、親の世代がこうした民間賃貸住宅を公社に借上げてもらい、「都民住宅」などとして管理してもらっている場合、賃貸住宅を相続した子どもは、この事情を知らずに、税務トラブルに巻き込まれることがあります(東京地裁平成29年3月17日判決)。

問題になったのは、借上げ・管理契約では、契約期間満了時に契約を終了することができるとされ、その際にプールされた共益費はオーナーの相続人に返還される契約でした。この場合は、共益費の扱いは原則に戻ることになります。

このため、公社にプールされた高額の共益費が一度に相続人の不動産所得になるは知らずに、戸惑ってしまったというのです。

この事例では約400万円もの共益費の余剰金があったのですが、相続人はこの余剰金について預り金と認識し、所得税の計算に含めないで確定申告していたところ、税務署が申告漏れを指摘し、更正処分したことから、争いになったということでした。

裁判所は、おおむね次のように述べて、相続人の不動産所得になるとしています。

...余剰金は共同住宅の賃貸人(オーナーの物件を転貸)として、義務の履行するための費用に充てるために入居者から徴収しており、入居者に変換する義務のない共益費部分については、借上契約期間中、被相続人らから委託を受けて一時的に管理していたもの。借上契約終了の際の収支では、繰り越すべき余剰金の金額が確定し、相続人に復帰されるべきこととなった金額であるから、相続人に対してもたらされた経済的価値の流入であり、その時点で相続人の収入すべき金額として確定したものといえる。余剰金の支払いを受けたことは、相続人のその年分の不動産所得に該当する。

[ 遠藤 純一 ]

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