店舗併用住宅で3000万円控除の適用が認められる家屋の範囲とは?
1.はじめに
マイホームを譲渡した場合の3,000万円特別控除(租税特別措置法(以下、措置法という。)35条1項、以下、3,000万円控除という。)の適用に関し、売却物件の一部が空いた事業用フロアだったケースで、本当に納税者が居住用として利用していたかどうかが、問われるケースは少なくありません。最近でもこうした問題が争われた国税不服審判所の裁決がありました(令和8年3月3日)。
3,000万円控除は、住宅を売却して利益が出た場合、譲渡所得の計算上譲渡益から最高3,000万円を控除する制度。居住の用に供している家屋とは、個人がその居住の用に供している家屋とされ、そこに居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限られることになっています(措置法35条2項、措置法施行令20条の3第2項)。具体的な判定の仕方は、その個人が生活の拠点として利用している家屋のことを指し、これに該当するかどうかは、その個人や配偶者等の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定されることになっています(措置法通達31の3-2)。
その範囲の面積に相当する部分は、居住用専用の床面積に、居住用と居住用以外に併用されている床面積を次の割合で按分した床面積を加算して求めます。その割合とは、居住用専用の床面積と居住用以外専用の床面積の合計床面積のうちに占める居住用の床面積の割合です。(措置法通達31の3-7)
2. 事案の概要
裁決書によると、1フロア当たり65㎡前後の4階建ての家屋で、2階について居住用かどうかが問われたものです。2階はAさんの妻が飲食店をやっていましたが、親族の介護のため閉店していました。この2階は、階段で直接来店できるほか、うち階段で3階から降りられる構造でした。売却までは改装せず、時折、妻が友人たちとの食事会や、子供たちが帰省した際の会食や就寝の場等としても利用していたといいます。
3階~4階には当事者Aさん家族が住んでいました。
Aさんは1階の一部、3~4階の他、2階も居住用だとして3,000万円控除の適用対象になるとして申告していましたが、税務署が2階について居住用と認めなかったことから、Aさんは最終的に国税不服審判所(以下、審判所という。)に判断を仰いだものです。
3.審判所の判断
審判所は、3,000万円控除が適用される「その居住の用に供している家屋」について、譲渡者が、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋の居住用に供された部分に限れられるとして、前記の具体的な判定の仕方を追認。問題の家屋の2階フロアについて、次のような事実関係を改めて確認しました。
①飲食店の営業をやめた後、Aさんは、コンクリート製の床や2階の施設全体について、専門業者によるリフォームやクリーニングを行っていないこと。
②飲食店で使用していたテープル、椅子等をこの不動産の売却決定後に欲しい人に譲り、残りは業者に依頼し処分したこと。
③Aさんの妻は飲食店の営業をしているときは定休日において月に数回、令和4年9月頃以降は週 1回、友人と食事会を開催していたこと。
④Aさんは、本件妻が本件飲食店の営業をやめた後、問題の家屋の2階に衣類等を保管したこと。
審判所は、譲渡者の生活状況や入居目的、家屋の構造等に関し、最終的に次のように認定しました。
(1)2階は飲食店の営業をやめた後に積極的に生活のために利用する目的を有していたということはできない。(2)3階・4階の居住空間とは異なる状祝にあって2階のみに設置された生活上必要な設備はない。
(3)日常的に昼食兼夕食で2階を使用していたとまで認めることはできない。(4)請求人の衣類等の保管は一時的な保管であった可能性が排除できない。(5)妻の友人との食事会は日常的な使用とはいえないこと。
こうしたことから審判所は、請求人が3階及び4階のほか2階をも生活の拠点としていたと認めることはできないと認定、問題の2階は、Aさんが居住の用に供していた部分に該当しないと判断しました。
4.まとめ
店舗併用住宅の遊休スペースは、散発的な私的利用では足りず、生活の拠点として継続的・客観的に利用していたことが明確でなければなりません。
改装の有無、生活設備の状況、などが重要なポイントになります。先例(平成11年2月25日公開裁決)もありますので、参考にしてください。
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