国内の店舗・事務所用建物の個人貸主における消費税の3割特例のポイント
1.適格請求書等保存方式の概要
消費税の納付税額は、課税期間(個人事業者は原則、その年の1月1日~12月31日)中の課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れに係る消費税額を控除(仕入税額控除)して計算します(以下、この課税方式を「一般課税」という)。仕入税額控除は原則、一定事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が必要であり、店舗・事務所用建物を賃借する借主が、支払家賃の消費税につき仕入税額控除を行う場合においても原則、その帳簿や適格請求書等の保存が必要です。
一方、借主に対して適格請求書を交付できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。店舗・事務所用建物の貸主が適格請求書発行事業者となるためには、税務署長に申請して登録を受ける必要があります。借主への便宜を図るため、免税事業者である貸主が適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、登録日以後は事業者免税点制度の適用を受けることができず、消費税の申告・納税義務を負うことになります。
2.3割特例のしくみ
3割特例は、個人事業者である適格請求書発行事業者について、適格請求書発行事業者の登録を受けなければ事業者免税点制度の適用を受けることとなる令和9年分及び令和10年分の課税期間に適用できる特例です。課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となった者も、適格請求書発行事業者であり、その登録を受けなければ事業者免税点制度の適用を受ける課税期間であること等の要件を満たす場合には、適用対象となります。具体的には、課税期間における課税標準額に対する消費税額から、売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額を控除した残額の7割相当額を特別控除税額として控除します(平成28年改正法附則(以下「附則」)51条の3第1項、第2項)。国税の消費税の納付税額は原則、その残額の3割相当額となり、これを基礎に地方消費税額を計算します。
3.3割特例の適用が受けられない場合
3割特例は、免税事業者が適格請求書発行事業者となることにより課税事業者に該当することになる場合を想定して設けられた特例です。3割特例を適用できる期間でも、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合や、特定期間(個人事業者の場合は前年1月1日~6月30日)における課税売上高等により課税事業者となる場合等、適格請求書発行事業者の登録の有無にかかわらず課税事業者に該当する課税期間は、適用除外です(附則51条の3第1項かっこ書)。
その他の主な適用除外事由は次のとおりです(同)。
①課税事業者選択届出書の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した課税期間中に一般課税により調整対象固定資産(注1)の仕入れ等を行い、事業者免税点制度が適用できない場合
②簡易課税制度及び3割特例等の適用を受けない課税期間に、高額特定資産(注2)又は自己建設高額特定資産の仕入れ等を行ったことにより、事業者免税点制度の適用が制限される場合
③課税期間を1か月又は3か月に短縮する課税期間の特例の適用を受けている場合
④相続により事業者免税点制度の適用が制限される場合。ただし登録日と相続日との関係等により適用できる場合があるため、個別の判定が必要です。
(注1)一の取引の単位につき税抜価額が100万円以上の棚卸資産以外の資産(建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品等)をいいます(消費税法2条第1項16号、同政令5条)。
(注2)棚卸資産又は調整対象固定資産で、一の取引の単位につき課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き)等が1,000万円以上のものをいいます(消費税法12条の4第1項、同政令25条の5)。
4.3割特例の適用手続及び簡易課税制度との関係
3割特例は、消費税の確定申告書に適用を受ける旨を付記することで適用できます(附則51条の3第3項)。同一の課税期間においては、3割特例と簡易課税制度のどちらかを選択する必要がありますが、店舗・事務所用建物の賃貸のみを行う場合は、簡易課税制度では原則として第6種事業(みなし仕入率40%)となり、通常は3割特例の選択が有利となります。
3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けようとする場合は、その翌課税期間に係る消費税の確定申告期限までに、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した簡易課税制度選択届出書を所轄税務署長に提出することにより、その翌課税期間から簡易課税制度を適用することができます(附則51条の3第5項、51条の2第6項、)。ただし簡易課税制度の適用に当たっては、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること等の要件を満たす必要があります。
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