遺留分侵害額の支払請求を受けた場合の相続税の小規模宅地等の特例の適用
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【問】 被相続人甲は令和7年5月に死亡しました。 |
【回答】
1.結論
相続税の申告の時までに遺留分侵害額が未確定の場合、甲に係る相続税はその侵害額請求がなかったものとして課税価格を計算します。本問の長男は、遺言により相続財産の全てを取得しているため、本特例の適用対象宅地等の選択において、他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことにより、本特例の適用を受けることができます。
2.解説
(1)遺留分制度の概要
被相続人の財産は、基本的には被相続人の意思で自由に処分することができます。しかし、被相続人が相続人以外の第三者または一部の相続人に対して、全財産を贈与または遺贈したような場合には、他の相続人が全く財産を取得できないという事態も考えられます。そこで民法では、相続財産のうち一定割合については「遺留分」として、兄弟姉妹以外の相続人に権利を留保することとしています(民法1042条)。具体的には遺留分権利者(遺留分を主張する相続人)が、受遺者又は受贈者(以下「受遺者等」)に対し遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができ、受遺者等は遺留分権利者に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うことになります(同1046条、1047条)。
(2)遺留分侵害額請求があった場合の相続税計算
遺留分権利者が遺留分侵害額の支払を請求し、金銭を取得することになった場合、遺留分権利者は、その金銭債権は相続により取得したものとして相続税の課税対象となり、その金銭を支払うこととなった受遺者等(遺留分義務者)については、その金銭債務はその者の相続税の課税価格から除かれます。
ただし、相続税の申告時に当事者間にその請求について争いがあり、遺留分侵害額が確定していないときは、不確定事実を基として課税することは事実上困難であることから、その請求がなかったものとして課税価格を計算することになります(相続税法基本通達11の2‐4、同逐条解説)。
(3)本特例の適用要件
本特例は、個人が相続又は遺贈により取得した宅地等のうち、被相続人等の事業用又は居住用に供されていた一定のものがある場合において、その個人が本特例の適用を受けるものとして選択した宅地等につき、被相続人等に係る相続税の計算上、一定面積までの部分について、その課税価格のうち一定額を減額できる税制です。個人が本特例の適用を受けるためには、対象となり得る宅地等を取得した人が1人のみである場合を除き、その宅地等を取得した人々の全員の同意を得る必要があります(措法施行令40条の2第5項3号)。
(4)本問へのあてはめ
本問の場合、相続税の申告時までに遺留分侵害額請求により次男に支払うべき金銭の額が未確定のため、上記(2)のただし書より、遺言に基づき長男が甲の相続財産を全て取得したものとして、相続税の課税価格を計算します。本特例の適用対象となり得る宅地等を取得したのが長男1人のみであることから、上記(3)の下線部より、その適用に際して他の相続人(次男)の同意は不要であり、他の要件を満たすことによって長男は本特例の適用を受けることができます。
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