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TACTニュース
No.761

匿名組合と任意組合、損失の税務

1.ビジネスチャンス

期間限定だが儲かる見込みの商売が有る、資金等の基盤は無いがその才覚で特定の商売をさせれば相応の利益を見込める人物が居る。世間には色々なビジネスチャンスがあるものです。

2.ビジネス参画

儲け口には色々な人が寄ってきて、共同経営しましょう、資金を出しますのビジネス参画が始まります。この様なビジネス参画での共同事業に関する法律が有ります。商法では匿名組合(商法535条~)、民法では組合契約(民法667条~)です。

3.任意組合

組合には農協、漁協、生活協同組合など特別法に基づいた組合が多数有ります。それらと区別するために純粋な民法上の組合を「任意組合」と呼んでいます。なお、特別法に基づく組合は法人格が有りますが、任意組合には法人格は有りません。

4.匿名組合と任意組合の相違点

匿名組合と任意組合の違いは、事業主体の違いです。匿名組合は、特定の個人又は法人(営業者)が事業を行います。匿名組合員はその事業に出資をするだけの立場です。これは、次の商法536条(匿名組合員の出資及び権利義務)で端的に理解できます。

①匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する
②匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。
③匿名組合員は、営業者の業務を執行し又は営業者を代表することができない。
④匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。

任意組合の事業主体は、原則として組合員全員です。つまり、第三者との売買契約等の契約は組合員全員が当事者となります。匿名組合は事業に対する出資の契約に対して任意組合は共同経営の契約となります。

5.匿名組合と任意組合の利用例

匿名組合は事業に対する出資ですので、その利用は幅広く、例えば期間限定のアトラクションの興業への出資など多彩な利用例が考えられます。匿名組合は旅客機などのレバレジットリースが代表例です。
任意組合は、「組合の業務の執行は組合員の過半数で決する」(民法670条1項)が原則となるため、現実的に組合員は少数でなければ合意形成の点で運営が難しくなります。利用例として、土木工事、建設工事を2~3社での共同受注(ジョイントベンチャー)が代表的かと思います。

6.利益の分配とその課税

匿名組合、任意組合で利益が生じると契約に従った分配が行われます。匿名組合での利益の分配に対して営業者は源泉徴収20.42%(所法210条等)を行う必要が有ります。匿名組合員が法人の場合は単純に益金算入です。匿名組合員が個人の場合は、原則として雑所得ですが、その組合事業の重要な業務執行の決定等営業者と共に経営していると認められる場合は事業所得その他所得となります。(所基通36・37共-21)任意組合では法人は益金算入、個人はその組合事業に携わっているのでその組合事業に沿った所得区分となります。

7.損失が生じた場合

組合事業での問題は損失が生じた場合です。任意組合では、止めどもなく膨らむ損失をどこまでも負担する(無限責任)こととなります。匿名組合では、無限責任か一定の負担なのか(有限責任)が定められます。税務では、損金、経費算入の制限が定められています。

8.税務の損失制限

①特定組合員
租税特別措置法で組合員をⅰ組合事業の重要業務(重要財産の売買、多額の借入の決定)に関与しその執行(「重要執行部分」)を行っている組合員とⅱそれ以外の組合員(「特定組合員」)に区別しています。特定組合員に損金算入、経費算入の制限が設けられています。

②法人税での制限(措置法67条の12)
特定組合員につき、例えば出資額100で出資額限度責任、毎期の組合損失を組合員は損金計上するが累積が▲120となった時、その責任限度を超える▲20(「組合等損失超過額」)は損金不算入にする。また、組合事業が実質的に欠損とならない場合は、その組合損失の全額を損金算入しないという内容です。実質的に損金にならない場合とは、例えば航空機のレバレジットリースで賃料が確定していて、終了時の航空機の売却額が確定している例が有ります。

③所得税での制限(措置法41条の4の2)
不動産所得である組合事業の損失について、特定組合員で有る場合、その損失はなかったものとされます。       

[ 森 繁之助 ]

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