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TACTニュース
No.760

会社分割のうち、第4の適格分割の類型・・・事業のスピンオフのために

2018.11.12 法人税

1 はじめに

ある会社から一部の事業を分離する方法の一つとして会社分割(会社法758、763等)があります。事業を分離する会社(法人税法上は「分割法人」ですが、会社を前提に、以下「分割会社」と表記します。)は、分離する事業の移転を受ける会社(同じく分割承継法人ですが、「分割承継会社」と表記します。)に、会社法が定める手続きを踏んでその事業に係る資産や負債を移転します。その事業とそれに属する資産等の移転の対価として、通常、分割会社は分割承継会社の株式や金銭などの分割対価資産の交付を受けますが、分割会社から分割承継会社への資産等の移転は、その資産等の「譲渡」に当たり、時価で譲渡されたものとされるので、法人税法上、分割する資産に含み損益がある場合は、原則として譲渡損益が生じます(同法62)。ただし、特例的な取り扱いとして、その会社分割が、法人税法上「適格分割」に該当すれば、分割承継会社に移転する資産・負債は、分割会社の(税務上の)帳簿価額で移転するものとされ、会社分割による譲渡損益が生じない取り扱いを受けます(同法62の2②など)。

2 適格分割の類型(同法2条12号の11)

適格分割は、従来は次の①~③の3類型でした。分割対価資産として分割承継会社の株式又は分割承継会社の100%親会社株式のいずれか一方の株式以外の資産=金銭などが交付されないことは、最後に述べる第4の適格分割の類型を含め共通の必須の要件です。
①分割会社と分割承継会社との間にいずれか一方の会社による完全支配関係(発行済株式の100%を保有していること)その他の政令で定める関係がある場合
②その分割に係る分割会社と分割承継会社との間にいずれか一方の会社による支配関係(発行済株式の50%超を保有していること)その他の政令で定める関係がある場合の分割で、分割事業に係る主要な資産や負債が分割承継会社に移転するなどの追加の3要件をも満たすもの
③分割会社と分割承継会社とが共同で事業を行うための分割として政令で定めるもの

これらに加え、平29年4月1日から第4の「適格」類型として、一の会社のみが分割会社となる分割型分割に限りますが、「分割会社の分割前に行う事業を、分割により新たに設立する分割承継会社において独立して行うための分割として政令で定めるもの」が加わりました。  
この第4の適格分割に当たれば、その移転する資産等は分割会社の帳簿価額で分割承継会社に移転するとされ、分割会社に移転資産の含み益に対する課税は生じません。その点で事業のスピンオフが進めやすくなります。

3 第4類型=「新たに設立する分割承継会社において独立して行うための分割」に該当するための要件

第一の要件は、(ア)分割の直前に、分割会社と他の者(個人または法人。個人の場合は、親族等の特殊な関係のある者を含む。以下同。)との間に、その'他の者'による支配関係がなく、かつ、(イ)その分割後に、分割承継会社と他の者との間に、その'他の者'による支配関係があることとなることが見込まれていないこと、です。これは、分割の直前に分割会社の株式を50%超有している者が誰もいない(=支配関係がない)状況で、分割承継会社(既存の会社ではなく、その分割において新たに設立する会社であることが必要です。)は、分割に際してその株式を分割会社の各株主にその持ち株割合に応じて交付することで、分割会社の各株主は、分割会社の株式の保有比率と同じ比率で分割承継会社の株主となりますが、その後、各株主の分割承継会社の株式が誰かに譲渡などで集められ、その誰かが分割承継会社の発行済株式の50%超を保有することが分割の時点で予定されていない(分割後に分割承継法人に支配関係を有する株主が生じないことが見込まれている)ということです。
更に、次の4要件があります(同法施行令4の3⑨)。

①分割前の分割会社の役員又は分割会社の分割事業に係る業務に従事している使用人のいずれかが、分割後に分割承継会社の特定役員(代表取締役、専務取締役など、法人の経営に従事している者)となることが見込まれていること。
②分割により分割会社の分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継会社に移転していること。
③分割に係る分割会社の分割の直前の分割事業に係る従業者のうちその総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が分割後に分割承継会社の業務に従事することが見込まれていること。
④分割会社の分割事業が分割後に分割承継会社において引き続き行われることが見込まれていること。

[ 亀山 孝之 ]

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