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2018.10.01No.755 離婚時の財産分与と第二次納税義務の話

カテゴリー:その他不動産と税務

1. はじめに

国税を滞納していた夫と別れる際に、夫の土地を「財産分与」で貰っていた女性が、あとで国税局から、「財産分与で貰い過ぎた財産から夫の滞納国税を納税する義務がある」との告知を受けた・・・そんな珍しい事例が最近ありました(東京地裁平成29年6月27日判決)。争いのもとになった税法上の定めは、「第二次納税義務」です。これは滞納者から財産を受け取るなどした第三者に課されるものです(国税徴収法39条)。  

2. 財産分与とは

「財産分与」とは、婚姻期間に夫婦で協力して作ってきた財産を分けて清算することです。ただし、こうした清算的な要素のほかに、別れた後の夫婦の一方の生活を維持するための扶養的な要素、夫婦の一方に不貞などがあって離婚に至る原因になったための慰謝料的な要素もあるとされます。なお、清算的な財産分与の対象は基本的に「共同形成財産」とされます。

3. 財産分与で第二次納税義務が問題になる場合

滞納国税の徴収をするうえで税務当局が問題視するのは、滞納者が、自分の財産を無償でほかの人にあげて、結果として滞納者本人から税金の徴収が出来なくなる事態です。これをカバーするため、国税徴収法39条「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」を定めています。そこで問題になる滞納者による財産等の移転は、次のポイントに抵触した場合です。

①滞納者の国税を徴収するため財産を滞納処分してもなお徴収すべき税額に足りない原因が
②滞納者が負担すべき国税の法定納期限の1年前の日以後に行われた
③無償又は著しく低い価格で滞納者の財産が譲渡、債務

の免除、第三者に利益を与える処分による場合この場合には、滞納者から財産等を取得した人は、受けた利益の現に存する限度内で、第二次納税義務を負うことになります。ただし、滞納者から財産を貰うなどした人と滞納者の関係が親族などの「特殊な関係」にある場合には、現に残っている利益かどうかを問うことなく「受けた利益」までを限度としてこの第二次納税義務が課せられることになります。第二次納税義務を負わされる人にとってはこのインパクトが大きいのです。
財産分与については、第二次納税義務との関係がどのようになるのかが、これまで議論されてきました。協議で財産分与を決めた場合には、財産分与が清算的・扶養的・慰謝料的な側面から見て不相当(やり過ぎ財産分与)であれば第二次納税義務の問題が生じるのではないか、とされてきたところです。

4. 裁判になった事例

この裁判例について簡略化して述べることにします。

①夫は、夫の父が平成9年に亡くなり、その財産全部を相続したことに伴い相続税を支払いました。滞納国税はこの相続税や亡き父の所得税及び土地を売ったことに伴う譲渡所得税などを主体とするものでした。
②平成12年、裁判の原告である妻Aさんが、夫と協議離婚するに際し、離婚の届出と引き換えに夫の土地(当時の固定資産税評価額で約1億4千万円相当)を財産分与(本件譲渡)で受け取るため所有権移転登記申請を司法書士に委任しました。その3日後、離婚の届出をしました。
③元夫への国税の滞納処分が断続的に行われ、平成24年になって、当局は国税徴収法39条に基づきおよそ1億円の「第二次納税義務」の告知をAさんにしました。この時夫には約500万円しかありませんでした。

裁判所は、やり過ぎの財産分与があったとしてAさんに第二次納税義務を認めました。しかし、原告が財産分与(譲渡)の時に夫(滞納者)の「特殊関係者」であったかという争点に関する判断では、納税者の言い分を一部認めました。この裁判における判断のハイライトです。
なぜ争点になったのかというと、土地の所有権移転登記申請の委任をしたのが離婚の届け出前だったためです。
裁判所は「既に原告(Aさん)と夫が協議上の離婚をする意思で離婚の届出を作成し、その届出を間近に控え、夫婦関係が完全に破綻して人的関係の一体性又は親近性を喪失し、財産の分配等をめぐり利害関係が対立する状況にある中で、離婚の届出と引換えに所有権移転登記が確実になされるように、離婚の届出に先立ち、離婚の届出書と登記申請の委任状の作成がされ、登記申請と引換えに離婚の届出がされたものということができる」と認めました(下線部は筆者が意を汲んで表記)。
そのうえで「離婚の成立時をもって本件譲渡に係る「処分の時」と認めるのが相当」として、Aさんは元夫の「特殊関係者」には該当しないと判断、現に残っている利益に限って第二次納税義務が追求されることになり、第二次納税義務の金額1億円のうちおおよそ2,000万円を取り消しました。   

[ 遠藤 純一 ]

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