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2018.10.09No.756 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予:対象株式と同一銘柄の株式の譲渡と"猶予の打切り"

カテゴリー:事業承継

【問】

㈱A(発行済株式総数3,000株)代表取締役の甲さんは、平成28年4月に先代経営者の父から同社株式3,000株の贈与を受けました。甲さんは贈与を受けたA社株式のうち、2,000株についてその当時の贈与税の納税猶予(いわゆる贈与税の一般措置)の適用を受け、1,000株については相続時精算課税の適用を受けています。
平成30年9月、甲さんは親密取引先の㈱Bから同年中の引き渡しを条件に、A社株式100株の購入の打診を受けました。甲さんは、相続時精算課税の適用に受けたA社株式の方をB社に譲渡するつもりですが、その譲渡が贈与税の納税猶予の適用対象とされたA社株式の方の譲渡とされ、猶予が打切りにならないか心配しています。
甲さんのように、非上場株式に係る贈与税の納税猶予 の適用を受ける受贈者が、その株式と同一銘柄の株式を有している場合に、これらの株式の一部を譲渡したときであっても、贈与税の納税猶予が打切りとならず継続することができますか。

【回答】

1.結論

甲さんは平成28年に父から贈与を受けたA社株式のうち、贈与税の納税猶予の適用を受けた株式以外の株式(=相続時精算課税の適用を受けた1,000株)のうち100株をB社に譲渡したものとみなされます。したがって、甲さんに係る贈与税の納税猶予の期限は確定せず、納税猶予が継続されます。

2.解説

(1)非上場株式等に係る贈与税の納税猶予の概要

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による都道府県知事の認定を受けたもの(認定贈与承継会社)の株式等を、その会社の代表権を有していた贈与者(先代経営者)から贈与により取得した個人が、その先代経営者の後継者として「経営承継受贈者」に当たる場合、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税額の納税が、経営承継受贈者の死亡の日まで猶予されます(措法70条の7第1項)。そして納税猶予税額は、その経営承継受贈者の死亡等の事由が生じた場合、原則、その全部又は一部が免除されます(同第15項)。
一方、経営承継受贈者(本問では甲さん)が経営贈与承継期間(*)内に、認定贈与承継会社の株式の一部を譲渡又は贈与(以下「譲渡等」)した場合、原則としてその譲渡等をした日から2ヶ月を経過する日に納税猶予の期限が確定(="納税猶予の打切り")となり、その日までに納税猶予税額の全部を利子税と併せて納付する必要があります(同第3項5号、27項)。
*「経営贈与承継期間」とは、原則、その非上場株式の贈与に係る贈与税の申告書の提出期限の翌日から同日以後5年を経過する日までの期間(甲さんの場合は、平成29年3月16日~平成34年3月15日)をいいます。

(2)贈与税の納税猶予を適用して株式を取得した個人が、その適用対象としなかった同一銘柄の株式を有する場合に、これらの株式の一部を譲渡したときの納税猶予の打切りの可否

甲さん保有のA社株式3,000株は、①贈与税の納税猶予の適用により取得した2,000株と、②相続時精算課税の適用により取得した1,000株が混ざっています。そのうちの100株を譲渡した場合は、①と②どちらの株式を譲渡したのかははっきりしません。その譲渡が①の株式の経営贈与承継期間内の譲渡とされた場合は、贈与税の納税猶予の全額の打切り事由に該当します。
 ただし、この点については、措法施行令40条の8第62項により、納税猶予の対象とした株式と同一銘柄の株式のうちの一部を譲渡した場合には、「その納税猶予の対象となった株式以外の株式から先に譲渡したものとして取り扱う」こととされています。
甲さんの場合、平成30年のB社に譲渡するA社株式は、納税猶予の対象となった株式以外の株式である1,000株から100株を譲渡したものとされます。したがって、贈与税の納税猶予の適用を受けた2,000株は譲渡していないことになり、猶予が継続されます。
*贈与税の納税猶予の特例措置(措法70条の7の5)
でも上記政令を準用し(措法施行令40条の8の5第37項)、同様の取扱いがされます。

[ 山崎 信義 ]

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