News
TACTニュース
No.747

中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る登録免許税・不動産取得税の軽減措置

1.創設の趣旨

後継者が不在のため事業承継が行えないといった課題を抱える場合、いわゆるM&Aによる再編等により、事業の継続等を図ることがあります。そのため、平成30年度税制改正により中小企業等経営強化法が改正され、M&Aによる事業承継を支援対象に追加することにより、認定を受けた経営向上計画に基づいて再編等を行った際に係る登録免許税・不動産取得税の軽減措置が創設されました。

2. 軽減措置の概要

(1)登録免許税

次の事項について登記を受ける場合で、その事項が、中小企業等経営強化法(以下「経営強化法」)に規定する認定経営力向上計画(経営力向上の内容として事業承継等を行う旨の記載があるものに限ります。)に係るもので平成32年3月31日までに認定を受けたものであるときは、これらの認定の日から1年以内に登記を受けるものについては、不動産の所有権の取得に係る登録免許税が以下の税率に軽減されます (措法80③)。

①事業に必要な資産の譲受けの場合 1.6%(通常2.0%)
②合併による場合 0.2%(通常0.4%)
③分割による場合 0.4%(通常2.0%)

(2)不動産取得税

中小事業者(措法10⑧五)又は中小企業者(同法42の4⑧六)が経営強化法に規定する認定経営力向上計画(経営力向上の内容として事業の譲受けが記載されているものに限ります。)に従って事業の譲受けを行い、平成32年3月31日までに不動産を取得した場合には、不動産取得税の課税標準の6分の1相当額が減額されます(地方税法11⑥)。したがって、この軽減措置の適用を受ける場合の不動産取得税額は、通常の税額の6分の5相当額となります。
なお、この不動産取得税の軽減措置は事業の譲受けの場合に限られており、合併や一定の要件を満たす分割の場合には不動産取得税は非課税となります(地方税法73の7②)。

3. 認定経営力向上計画に係る認定の手続きについて

(1)認定経営力向上計画とは

「認定経営力向上計画」とは、経営強化法に規定する「経営力向上計画」で事業分野別の主務大臣の認定を受けたものをいいます。「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、計画実行のための支援措置(税制措置や金融支援)を受けることができます。
適用を受けられる「中小企業者等」の規模は資本金額10億円以下又は従業員数が2,000人以下である必要があります。税制措置・金融支援によって対象となる規模要件が異なりますので、中小企業庁が発行する最新の「税制措置・金融支援の活用の手引き」をご確認ください。

中小企業庁HP「税制措置・金融支援の活用の手引き」
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2018/180601zeiseikinyu.pdf

(2) 認定の手続

中小企業庁「経営力向上計画策定の手引き」に記載されている認定までの手続の方法は、次の通りです。

① 手続の流れ
ⅰ要件や手続等を確認し適用を受ける準備をします。
ⅱ経営力向上計画を策定します。策定時のポイントは以下の通りです。
(ア) 「日本標準産業分類」で該当する事業分野を確認します。
(イ) 事業分野別指針を確認します。
(ウ) 事業分野別指針を踏まえて経営力向上計画を策定します。
ⅲ各事業分野の主務大臣に経営力向上計画の申請をし、認定を受けます。
認定を受けた場合、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。
ⅳ経営力向上計画を開始し、取組を実行します。

② 経営力向上計画の申請書の提出先
事業分野によって異なるため、「日本標準産業分類」で該当する事業分野の中分類・細分類項目名を確認します。その上で、中小企業庁HPに記載されている「事業分野と提出先」により提出先を確認する必要があります。

中小企業庁HP「経営力向上計画策定の手引き」
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2018/180601tebiki.pdf

[ 吉濱 康倫 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。