News
TACTニュース
No.722

所得税の特定の事業用資産の買換え特例(7号)の買換資産である土地等の面積要件の判定

【問】

不動産賃貸業を営む甲さんは、平成30年1月に東京都大田区に所有する貸工場とその敷地(所有期間は10年超)を総額18億円で譲渡しました。甲さんはその譲渡代金により平成30年中に東京都中央区所在のマンション1棟のうちの18戸を同一の契約で購入し、直ちに個人18人に対し賃貸する予定です。そのマンションの敷地利用権の面積は各戸とも16.7㎡、18戸合計で300.6㎡です。
甲さんは、譲渡した太田区の不動産に係る譲渡所得の金額が多額になることから、その所得税の計算上、租税特別措置法(措法)37条第1項7号の「国内にある10年超所有の土地等、建物等から国内にある土地等、建物等への買換え(以下「7号買換え」)」の適用を受けようと考えています。
7号買換えにおいて土地等を買換資産とする場合、「住宅等の一定の施設で福利厚生施設以外のもの(特定施設)の敷地で、その面積が300㎡以上」という要件(以下「面積要件」)があるそうですが、甲さんが購入予定のマンション18戸に係る敷地利用権は、この面積要件を満たすことになりますか。

【回答】

1.結論

甲さんの場合、一の取引で一棟の(同一の)分譲マンション18戸をまとめて取得し、これらが特定施設に該当することから、その敷地が7号買換えの面積要件を満たすかどうかは、これら専有部分に係る敷地利用権の面積の合計により判定します。甲さんが購入予定のマンション専有部分に係る敷地利用権は、その面積の合計が300.6㎡(≧300㎡)であることから、7号買換えの面積要件を満たします。

2.理由

(1)特定の事業用資産の買換え特例の概要

個人が特定の事業用資産(譲渡資産)を譲渡し、一定期間内に特定の資産(買換資産)を取得して、取得の日から1年以内に事業の用に供する場合、一定の要件のもと、①譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額以下である場合は、その譲渡資産のうち収入金額の80%に相当する金額を超える金額に相当する部分②譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額を超える場合は、その譲渡資産のうち、その買換資産の取得価額の80%に相当する金額を超える金額に相当する部分の譲渡資産の譲渡があったものとして、譲渡所得の金額が計算されます。これが「特定の事業用資産の買換え特例」です(措法37条第1項)。特定の事業用資産の買換え特例の8類型のうち、適用要件が緩やかなため利用されることが多いのが、同項の7号買換えです。

(2)土地等が7号買換えの買換資産とされる要件

次の①及び②を全て満たすことが必要です。
①次のイ又はロのいずれかに該当すること。
イ.事務所、住宅その他これらに類する施設で福利厚生施設以外のもの(特定施設)の敷地の用に供されるもの(その特定施設に係る事業の遂行上必要な駐車場の用に供されるものを含む。)
ロ.駐車場の用に供されるもののうち一定のもの
②その面積が300㎡以上のものであること。

(3)面積要件の判定

上記(1)のとおり7号買換えの買換資産に該当する土地等とは、特定施設の敷地の用に供されるもの等で、面積が300㎡以上のものに限られます。
また措法通達37-11の14の(1)は、その土地等が区分所有に係る特定施設の敷地の用に供されるものである場合、個人が取得した土地等の面積が7号買換えの面積要件を満たすかどうかの判定は、[その土地等の総面積×その個人の専有部分の床面積÷その特定施設の専有部分の総床面積]の算式で計算した面積により行うとしています。
7号買換えの適用上、特定施設に該当するかどうかは、その減価償却資産(本問の場合は建物)の用途により判定すると考えられますので、本問の分譲マンションのような区分所有建物については、原則、その機能を発揮する最低単位(取引単位)である独立部分(専有部分)ごとに判定することとなり、専有部分の取得に伴い取得する敷地利用権が面積要件を満たすかどうかについても、その専有部分ごとに判定するのが基本的な考え方です。しかし、一の取引で一棟の建物に含まれる複数の専有部分をまとめて取得し、かつ、それらが特定施設に該当する場合には、その複数の専有部分に係る敷地利用権の面積の合計により判定することがふさわしいと思われます。

甲さんの場合、一の取引で一棟の建物の各専有部分に対応する本件敷地利用権をまとめて取得することを予定しており、これらの敷地利用権は全て特定施設(福利厚生施設に該当しない住宅)の敷地の用に供される土地に該当しますので、その面積の合計により「その面積が300㎡以上」の土地等に該当するかどうかを判定します。甲さんが取得するマンション18戸の敷地利用権の面積の合計は300.6㎡で300㎡を超えるため、7号買換えの面積要件を満たします。(参考:平成28年10月20日東京国税局文書回答事例)

[ 山崎 信義 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。