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TACTニュース
No.709

一般社団法人(非営利型法人)が設立時に寄付を受けた場合の法人税

2017.10.16 法人税

1はじめに

一般社団法人は、法人税法2条9号の2の「非営利型法人」の要件を満たす場合は、「公益法人等」(同5号)とされます。公益法人等に当たる一般社団法人には、一定の収益事業(同13号)を行う場合に限り、収益事業に係る所得の金額について法人税の納税義務が生じます(同法4条1項)。それでは、公益法人等である一般社団法人が収益事業に使われる高額な機械の贈与を受けた場合、その受贈益は、法人税法上、収益事業に係る所得(に係る益金の額)に含まれるべきもの、すなわち課税対象となるのでしょうか。

2 収益事業に係る税制・・1の問題に関係する部分

法人税法上、収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいい、同法施行令5条1項において、34種の事業が限定列挙され、収益事業には、その性質上その事業に付随して行われる行為を含むこととされています。ここで、「その性質上その事業に付随して行われる行為」について、同法基本通達15-2-6が「通常その収益事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為をいう。」と規定しており、そこでは、さらにいくつか例示が挙げられています。その例の一つとして「(6)公益法人等が収益事業に属する固定資産等を処分する行為」が挙げられていますが、この(6)の行為による処分損益については、別途、同通達15-2-10があり、同通達が重要な例外的取扱い=収益事業に係る損益としないことができる場合を明らかにしています。同通達(要旨)は以下の通りです。
「公益法人等が収益事業に属する固定資産につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益は、原則として収益事業に係る損益となるのであるが、次に掲げる損益(当該事業年度において2以上の固定資産の処分があるときは、その全てに係る損益とする。) については、これを収益事業に係る損益に含めないことができる。

(1) 相当期間にわたり固定資産として保有していた土地(借地権を含む。) 、建物又は構築物につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益(土地について区画変更を行ったことによって付加・増加した価値分は除く)
(2) (1)のほか、収益事業の全部又は一部を廃止してその廃止に係る事業に属する固定資産につき譲渡、除却その他の処分をした場合におけるその処分をしたことによる損益」

(1)は、土地や建物などについて、その長期間の保有に基づく過去の値上がり益(いわゆるキャピタルゲイン)については、現行の収益事業課税制度上それ自体を単独の収益事業としていないことによる取り扱いであり、(2)は事業の廃止自体は収益事業の付随行為とはいえないことによる取り扱いです。
一方、公益法人等が他社から贈与を受けた場合の寄付金収入(現物資産も含みます。) については、同通達15-2-12の (2) の収益事業に係る収入又は経費を補填するために交付を受ける補助金等の額を除き、収益事業に係る益金の額に算入しないとされています。これは、贈与を受けることは原則として収益事業そのものではないからです。

3 あてはめ

公益法人等が贈与を受けて生ずる1の「受贈益」については、その受贈資産は収益事業において使用されるもので、収益事業に属する資産となります。そして、その後その固定資産を譲渡等によって処分した場合は、事業用の機械という性格上(土地等と違い、)キャピタルゲインが見込まれるケースは多くないと思われますが、前記15-2-10にも当たらないので、その処分の際の損益は原則として収益事業の付随行為になる、つまり、課税対象になると考えられます。そうすると、その取得時の利益=受贈益についても、処分時の前記取扱いとのバランスを考えると収益事業の付随事業に係る損益となるのではないかとも考えられます。
しかしながら、この贈与による機械の取得は、15-2-12の(1)で、収益事業に当たらないものとして、収益事業の用に供される固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額と何ら実質的に(その結果において) 変わらないといえます。また、会社等の場合の出資金の受入(資本等取引として益金不算入)と実質的に同じではないかとの指摘も可能です。 
そして、前記同通達15-2-12の (2) の収益事業に係る収入又は経費を補填するために交付を受ける補助金等の額に類するものでもありません。以上により、1のケースの受贈益は収益事業に係る益金の額には該当しないと考えられます。

[ 亀山 孝之 ]

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