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No.698

タワーマンション(居住用超高層建築物)に係る固定資産税の改正

1.分譲マンション家屋部分の固定資産税計算(原則)

マンションのような区分所有の家屋に係る固定資産税額は、次の算式により計算します。なお、区分所有の家屋に係る都市計画税の計算方法も同様です (地方税法352条1項ほか)

(算式)各住戸の税額=マンション一棟の固定資産税額×各住戸の専有床面積÷専有床面積の合計額

2.タワーマンション(居住用超高層建築物)に係る固定資産税計算の改正

(1)趣旨

区分所有の家屋に係る固定資産税については、上記1の算式により、区分所有者の有する専有部分の床面積の割合が同じであれば、原則として、各区分所有者の納付すべき税額は同額となります。しかし、タワーマンションは低層階の分譲価格に比べて高層階の分譲価格が高くなることが多く、各専有部分の分譲価格差と各区分所有者の税額とのバランスが整合していないのではないかという意見もありました。
上記の意見を踏まえて、平成29年度税制改正により、タワーマンションの区分所有者が納付すべきその家屋に係る固定資産税額については、下記(2)のとおり実際の分譲価格を踏まえた按分方法により計算されることになりました(なお、都市計画税の税額計算についても同様の取扱いが創設されています)。

(2)居住用超高層建築物に係る固定資産税額の計算

高さが60mを超える建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているものを「居住用超高層建築物」とし、その固定資産税額の計算は次の通りです(同352条2項、同施行規則15条の3の2、7条の3の2)。
 ①居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる各区分所有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差違による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率(「階層別専有床面積補正率」)により補正します。
 ②階層別専有床面積補正率は、最近の取引価格の傾向を踏まえ、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一つ増えるごとに、これに10/39を加算した数値とします。したがって、N階の階層別専有床面積補正率=100+10/39×(N-1)となります。改正後の固定資産税額の算式は次の通りです。 

(算式)各住戸の税額=マンション一棟の固定資産税額×各住戸の専有床面積×階層別専有床面積補正率÷専有床面積の合計額(補正後)

例えば1階に係る固定資産税額が100の場合、40階の固定資産税額は110となります。なお、マンション一棟の固定資産税額(総額)は、今回の改正の前後で増減はありません。
③居住用以外の専有部分を含む居住用超高層建築物においては、まず、その居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を、床面積により居住用部分と非居住用部分に按分し、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場合についてのみ、階層別専有床面積補正率を適用します。
④上記①から③までに加え、天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行います。
⑤上記①から④までにかかわらず、居住用超高層建築物の区分所有者全員による申出があった場合には、その申し出た割合により居住用超高層建築物に係る固定資産税額を按分することもできます。

(3)適用時期

上記(2)の改正は、平成29年1月2日以後に新築された居住用超高層建築物(平成29年3月31日までに売買契約が締結された者の居住用の専有部分を含むものを除く。)の平成30年度分以後の年度分の固定資産税について適用されます(改正法附則1条柱書、17条5項)。

3.いわゆる"相続税のタワーマンション節税"に対する国税庁の対応

今回のタワーマンションに係る固定資産税の改正は、税額計算の改正であり、その家屋部分の固定資産税評価について特に改正はありません。タワーマンションの家屋部分に係る相続税法上の評価は固定資産税評価額とされており(財産評価基本通達89)、その固定資産税評価額は時価に比べて大幅に低い価額であることから、資産家の相続税対策として金融資産をタワーマンションに組換える"タワーマンション節税"を引き続き勧める向きもあるようです。
しかし、このような節税策について国税庁は、既に平成27年10月29日の記者発表で、「当庁としては、実質的な租税負担の公平の観点から看過しがたい事態がある場合には、これまでも財産評価基本通達6項を活用してきたところですが、今後も、適正な課税の観点から財産評価基本通達6項の運用を行いたいと考えております(抜粋)」との見解を示しています。財産評価基本通達6項は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定めており、タワーマンションの取得・保有の状況や経緯によっては、その家屋部分につき通常の固定資産税評価によらない評価がされることがありえますので、注意が必要です。

[ 山崎 信義 ]

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