税理士法人タクトコンサルティングは相続対策・贈与・譲渡・事業承継など資産税専門の会計事務所です。相続税申告、遺産分割、生前贈与、民事信託・商事信託等、相続コンサルティング専門の税理士集団です。

  • ホーム
  • TACTニュース
  • 平成29年度改正:非上場株式等に係る贈与税の納税猶予打切り時の相続時精算課税の適用

TACTニュース

2017.07.10No.696 平成29年度改正:非上場株式等に係る贈与税の納税猶予打切り時の相続時精算課税の適用

カテゴリー:事業承継相続対策と相続税申告税制改正

1.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予・免除制度

(1)制度の概要
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する非上場会社で、同法による経済産業大臣の認定を受けたものの株式を、その会社の代表権を有していた先代経営者(「贈与者」)から贈与を受けた受贈者が、その会社の後継者として一定の要件を満たす者(「経営承継受贈者」)である場合には、経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等のうち一定の部分(「特例受贈非上場株式等」)に対応する額の納税が、その贈与者の死亡の日まで猶予されます(租税特別措置法(措法)70条の7第1項)。
その納税猶予税額は、その贈与者の死亡の時以前にその経営承継受贈者が死亡した場合や、その贈与者が死亡した場合などの事由が生じたときは、原則、その全部又は一部が免除されます(同第15項)。

(2)納税猶予の打切り
経営承継受贈者が、(1)の贈与税の納税猶予税額が免除される時までに、納税猶予の適用を受けた非上場株式等を譲渡した等の一定の事由が生じた場合は、原則として納税猶予の期限が確定(猶予の打切り)し、納税猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります(同第4項ほか)。

2.非上場株式等に係る贈与税の納税猶予における、相続時精算課税の適用(納税猶予の打切りの場合)

(1)平成29年度税制改正前の取扱い
相続時精算課税は、受贈者である個人が贈与財産に対する贈与税として、[(贈与財産の贈与時の価額の合計額-2,500万円を上限とする特別控除額)×20%(一律)]により計算した税額を納め、その贈与者が亡くなった時に、その贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより、贈与税・相続税を通じた納税を行う税制です(相続税法(相法)21条の9~21条の16)。
ただし、平成28年までは、経営承継受贈者が先代経営者からの贈与につき、相続時精算課税を選択した場合でも、先代経営者から贈与されたその非上場株式について納税猶予制度の適用を受けるときは、その猶予税額の計算上は相続時精算課税の適用を認めない規定があった(旧措法70条の7第3項)ため、贈与税の猶予税額は暦年課税で計算されていました。
暦年課税の贈与税は課税最低限(基礎控除)が110万円と低く、税率の累進度合は高く設定(父母・祖父母からの贈与により取得した財産の価額が4,610万円超の場合、適用税率は55%)されているため(措法70条の2の4、70条の2の5)、その納税猶予の打切り時には、経営承継受贈者が納付すべき贈与税額が高額になるおそれがあり、これに対する不安が、贈与税の納税猶予制度の利用が増えない原因の一つだろうと指摘されていたところでした。

(2)平成29年度税制改正後の取扱い

先代経営者から経営承継受贈者への平成29年1月1日以降の非上場株式の贈与につき、贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合において、その経営承継受贈者が先代経営者からの贈与について相続時精算課税を選択しているときは、その選択は納税猶予税額の計算上そのまま認められ、猶予税額の計算が相続時精算課税により行われることになりました(措法70条の7第2項5号ロ)。
今回の改正により、相続時精算課税を選択した経営承継受贈者の納税猶予が打切りになった場合、その納付すべき贈与税は、2(1)下線部の算式で計算した額(利子税別途)とされました。この結果、納税猶予打切り時の税負担が軽減されるため、贈与税の納税猶予制度の利用件数の増加が期待されています。

3.適用を受けるための要件

これまで相続時精算課税の選択をしなかった経営承継受贈者が、上記2(2)の適用を受けて納税猶予分の贈与税額を相続時精算課税により計算しようとする場合は、その特例受贈非上場株式等の贈与を受ける年の贈与税の申告期限(翌年3月15日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、相続時精算課税選択の届出を行う必要があります(相法21条の9第2項)。

4.適用時期

上記2(2)の改正は、平成29年1月1日以降に行われる非上場株式の贈与について適用され、平成29年1月1日前に贈与により取得した非上場株式に係る贈与税の納税猶予については、従前通りの取扱いとされます(改正法附則88条第10項)。
平成28年12月31日以前に行った非上場株式の贈与につき、すでに贈与税の納税猶予の適用を受けている場合、今回の改正につき特段の経過措置は設けられていないため、その納税猶予が打切りになったときに納付すべき猶予税額は、従前通り暦年課税により計算した贈与税額となります。

[ 山崎 信義 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。