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TACTニュース
No.672

消費税率の引上げの再延期に伴う住宅取得等資金の贈与に係る贈与税非課税制度の見直し

1.はじめに

「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」が平成28年11月28日付で公布・施行され、消費税等の税率の10%への引上げが平成31年10月1日に再延期されました。
同法により、「住宅取得等資金の贈与に係る贈与税非課税制度(租税特別措置法70条の2。以下「非課税特例という。)」が改正され(以下「平成28年11月改正」という。)、その適用期限が平成33年12月31日まで延長されるとともに、非課税限度額に係る住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結期間が変更されました。今回はこの非課税特例(東日本大震災の被災者に係る税制を除く。)のうち、平成28年11月改正による、贈与税の課税価格に算入しない金額(非課税限度額)について解説をします。

2.平成28年11月改正後の非課税限度額の取扱い

この非課税特例における非課税限度額は、(1)特別住宅資金非課税限度額(同2項7号)と、(2)住宅資金非課税限度額(同6号)の二つに区分されています。

(1)特別住宅資金非課税限度額
特別住宅資金非課税限度額とは、非課税特例の適用を受けることができる受贈者が、住宅取得等資金の全額を充てて新築等をした住宅用家屋が、「10%適用住宅」(その新築等に係る家屋の対価又は費用の額に含まれる消費税等の税率が、10%であるものをいう。)であるものに係る非課税限度額をいい、次表の住宅の新築等に係る契約の締結期間と住宅の区分に応じ、それぞれに定める金額をいいます。

住宅の新築等に係る契約の締結期間住宅の区分と非課税限度額
良質な住宅*の非課税限度額A左記以外の住宅の非課税限度額B
H31.4.1~H32.3.31 3,000万円 2,500万円
H32.4.1~H33.3.31 1,500万円 1,000万円
H33.4.1~H33.12.31 1,200万円 700万円

*上表及び後述(2)の表における「良質な住宅」とは、一定の省エネルギー性、耐震性又はバリアフリー性を備えた住宅をいいます(同6号イ)。なお、中古住宅を取得後、その同一年中に中古住宅を良質な住宅に該当するように増改築した場合、その非課税限度額は上表のA又はBのうちいずれか多い方の金額とな ります(同7号柱書のかっこ書)。

(2)住宅資金非課税限度額

住宅資金非課税限度額とは、特定受贈者が住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用家屋のうち、平成31年4月1日以後にその新築等に係る契約を締結した10%適用住宅以外の住宅(個人から取得した、消費税が課税されない住宅を含む。)に係る非課税限度額をいい、具体的には次表の住宅の新築等に係る契約の締結期間及び住宅の区分に応じ、それぞれに定める金額をいいます。

住宅の新築等に係る契約の締結期間住宅の区分と非課税限度額
良質な住宅*の非課税限度額C左記以外の住宅の非課税限度額D
~H27.12.31 1,500万円 1,500万円
H28.1.1~H32.3.31 1,200万円 700万円
H32.4.1~H33.3.31 1,000万円 500万円
H33.4.1~H33.12.31 800万円 300万円

3.特別住宅資金非課税限度額と住宅資金非課税限度額の双方の適用がある場合の取扱い

(1)既に非課税特例の適用を受けている場合
特別住宅資金非課税限度額及び住宅資金非課税限度額は、既に非課税特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額までの額とされます。ただし、平成31年3 月31日までに住宅用家屋の新築等に係る契約を締結し、前述(2)の非課税特例の適用を受けた住宅取得等資金は、特別住宅資金非課税限度額の計算上、控除する必要はありません(同1項柱書のかっこ書のかっこ書)。

(2)同一年に住宅の取得と増改築等を行う場合
個人から消費税の課されない中古住宅を取得し、その同一年中にその住宅を消費税率10%で増改築をした場合に、この取得及び増改築に係る契約の双方を平成31年4月1日以後に締結しているときは、特別住宅資金非課税限度額又は住宅資金非課税限度額のうち、いずれか多い金額が非課税限度額とされます(同1項柱書)。

4.留意点

上記2と3のとおり、住宅用家屋の取得等に係る契約の締結期間により贈与税の非課税限度額が異なりますので、注意が必要です。 

[ 山崎 信義 ]

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