最新の財産評価基本通達6項適用事例 15億円借入・18億円で購入の不動産を3億8千万円で申告の相続対策 審判所は鑑定による再評価約13億円での更正・追徴を支持
相続開始直前に高額の借入で不動産を購入し行われた相続対策に対し税務署から財産評価基本通達6項の適用で相続税が追徴され争いになった事例が明かになりました(国税不服審判所裁決令和7年1月10日)。
これは、病院に入っていた被相続人が、相続開始前3か月ほどの間に約15億円の借入で5件・約18億円の不動産を購入したケースです。
相続人3人は、相続税申告では上記不動産の評価額を合計約3億8千万円として相続税を節税し、申告から約3年後にその不動産を売却等するとともに債務を返済しました。
ところが、税務署はそれを見越してか、令和4年3月付の不動産鑑定書を基に令和5年に、財産評価基本通達6項の適用により、相続した不動産について鑑定価額約13億8千万円とする相続税の増額更正処分等をしたというものです。
相続人は税務署の処分を不服として国税不服審判所(以下、審判所という。)に審査請求しました。
評価通達通りに評価することが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるかに関して、相続人は、次のように主張しました。
①被相続人は、遅くとも平成29年6月頃には、自身の財産形成のー環として不動産の購入を決断しており、不動産の取得・借入れも、親族等に相談することなく本件被相続人が単独で決断したもの。
②仮に、不動産の取得・借入れが租税負担の軽減を意図して行われたものであったとすれば、相続の開始後、可及的速やかに不動産を売却して現金化を図るのが自然かつ合理的であるが、請求人らは、令和2年11月27日に至っても不動産をいずれも売却しておらず、また売却する予定もなかったとして、不動産の取得、借入れは請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではない。
しかし審判所は、次のようなことを認定・指摘しました。
(1)請求人(相続人)から平成29年末に相続用にマンションを5件程度探してほしい旨の依頼を受けた不動産仲介業者は、全て請求人とやり取りをし、被相続人とは直接会ったことも、電話でやり取りをしたこともなかったこと。
(2)金融機関の担当者は借入金で不動産を購入することには本件被相続人の相続税の節税メリットがあるという話をしたことがあったこと。
(3)平成29年末には被相続人は集中治療室で治療を受けており、相続人らは被相続人の相続が近い将来発生することを予想していたものと推認されること。
一連の認定事実等から審判所は、不動産の「各取得・各借入れは、近い将来発生することが予想される本件被相続人の相続において請求人らの相続税の負担を減免させるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して急ぎ実行されたと認められるから、(不動産の)各取得・各借入れは、請求人らの租税負担の軽減をも意図して行われたものといえる」と判断しました。
また審判所は、相続人が「相続の開始後速やかに不動産を売却していないとしても、そのことは直ちに、(不動産の)各取得・各借入れが請求人らの租税負担の軽減を意図して行われたものではないことを推認させる事情とはいえない」と述べ、税務署の追徴を支持しています。
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