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ふるさと納税の返礼品は一時所得、申告漏れにご用心

2022.08.22

「ふるさと納税」で受け取った返礼品の経済的利益について、納税者が所得税の申告をしなかったため、最終的に国税不服審判所(以下、審判所といいます。)で税務署と争った事案があります(令和4年3月1日)。

総務省のふるさと納税のポータルサイトでは、返礼品の経済的価値が所得税の扱いで一時所得の「経済的利益」に当たるとして、注意を喚起しています。しかし現実には申告漏れ見られるようです。

問題の事案は、ある納税者が平成27年から平成30年の4年間に、自治体131件に対し総額約7千万円弱の寄付をし、返礼品を受け取っていたケースです。

税務署は、返礼品を受け取ったことによる経済的利益は一時所得に当たるとして納税者の申告漏れを指摘しました。一時所得は「総収入金額-収入を得るために直接支出した金額―特別控除額(最高50万円)」で計算します。仮に返礼割合が全部3割だったとしたら、その経済的利益は4年間で合計ざっと2,100万円弱に上る計算になります。

しかし納税者は「返礼品は寄附の対価であり、返礼品の受領による経済的利益はなく、申告すべき一時所得はない」などと不服を主張し、審査を行う審判所に判断を仰いだものです。対価であれば経済的利益はなく、返礼品の評価も問題にならないからです。主な争点を簡便にまとめると、次の2つです。
(1)返礼品は寄附金の対価か、それとも謝礼であり経済的利益があって、一時所得の計算に含めるべきかどうか(争点1)。
(2)各返礼品の価額はどのように評価するか(争点2)。

審判所は、争点1に関し、「返礼品は、各地方公共団体がふるさと納税とは別に、各地方公共団体の独自の取組みにより、寄附者に謝礼として提供されるものと評価すべきであり、ふるさと納税に係る寄附金と返礼品との間に対価性は認められない」と判断しました。結局、審判所は返礼品の経済的利益に関し一時所得に該当するとしています。その前提となる認定事実は次のとおりです。

①法令上、寄附を受けた地方公共団体が返礼品を提供するものと定めた規定はないこと。
②総務大臣は都道府県知事あてに出した通知等において、寄附金が経済的利益の無償の供与であることを踏まえ、返礼品の送付が対価の提供との誤解を招きかねないような表示により寄附の募集をする行為を行わないよう通知をしていること。
③納税者が地方公共団体から受領した返礼品の価額については、当該地方公共団体に問い合わせることによって確認することが可能。

次に審判所は争点2に関し、金銭以外のものをもって収入とする場合の金額は所得税法36条の規定により「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額、(中略)取得の時における客観的交換価値」とされていることを受け、「地方公共団体が返礼品の調達に要した費用が、寄附者における返礼品の受領による経済的利益の客観的交換価値(中略)であると認めるのが相当」と判断しています。

その理由は次のとおりです。
(1)寄附額に応じた物品等を選定し、調達すると考えるのが合理的で、返礼品の価値を最も把握しているのは、返礼品を調達した地方公共団体であるといえること。
(2)地方公共団体と返礼品の調達先事業者との間に特別な動機を挟む余地はなく、客観的交換価値を超える金額で返礼品を調達することはないと考えるのが自然かつ合理的。

[ 遠藤 純一 ]

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