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建物取壊費用が譲渡費用になるかどうかで争われた裁決事例

2021.09.13

土地を高く売る際に、古い家屋がある場合には取壊しをするなど、様々な工夫がなされます。土地を売った場合にかかる税金の計算上も、この取壊費用は費用として利益から控除することができます。しかし、取壊費用だからといって、どんな場合でも税金の計算上費用として認められるかというと、そう簡単ではないようです。

譲渡費用は、国税庁の取扱いで次のようになっています(所得税基本通達33-7)。
(イ)資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用

(ロ)上記(イ)に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含む。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用

譲渡費用として認められなかった事例の概要は次のとおりです(国税不服審判所令和3年2月25日裁決)。

・親からX土地とそこに建つ老朽化したY建物、Z建物を相続したAさんは、Z建物に車が突っ込んだ事故があり、賃借人が退去したのを機に平成25年3月に、約330万円を負担してY建物、Z建物を取壊した。
・Aさんは平成26年11月に不動産仲介会社とX土地の売買に関する媒介契約をし、平成30年8月にX土地の売買契約をBさんと締結、同月中に引き渡した。
・Aさんは建物取壊費用をX土地の譲渡所得の計算上、譲渡費用として控除したが、令和2年4月に、所轄税務署がその取壊費用の控除は認められないとして追徴してきた。
・Aさんは、取壊費用がX土地を高く売るために必要だったとして国税不服審判所に審査請求した。

審理した国税不服審判所はまず、資産の譲渡に当たって支出された費用が譲渡費用に当たるかどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきとの判断基準を示しました。

そして取壊しについて、「老朽化や車の衝突事故による損傷等に起因して行われたものとするのが合理的」で、X土地の「媒介契約や売買契約の前提又は内容になっていなかった」と指摘し、「客観的に見てこの譲渡を実現するために(取壊し)費用が必要であったとは認められない」と判断しています。今回の場合は、取壊しが、売買契約等と関連していなかったことに問題があったといえそうです。

[ 遠藤 純一 ]

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