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会計検査院 住宅税制にモノ申すローン控除と譲渡特例の併用可能な「空白の1年」に問題

2019.11.18

国の決算のお目付け役である会計検査院が平成30年度決算検査報告で住宅税制の矛盾点を指摘し、話題となっています。

先ごろ公表された平成30年度決算検査報告によると、会計検査院は、46税務署において29年に住宅ローン控除特例の適用を開始している納税者85,916人から増改築等に係るものを除いた上で、機械的に抽出した者のうち、申告書に添付された登記簿謄本により住宅ローンの借入金利を確認できた納税者1, 748人及び譲渡特例等のうち最も適用件数が多い議渡特例の適用を28年は29年に受けている納税者24,004人を対象として検査しました。検査は、課税の公平原則を前提に国の政策目的を実現するなどのため国民の納得できる必要最小限のものになっているかどうかなどに着目して行ったということです。

その結果、住宅の取得を促進する税制である住宅ローン控除(租特41条)とマイホームを売って利益が出た場合の譲渡特例、例えば3,000万円控除(租特35条1項)は、両方を適用することに制限が付けられているのに、「空白の1年」があるため、両方の適用をしたケースが37人あったことが分かったということです。

住宅ローン控除の適用要件は、居住した年とその前後2年間のうちにマイホームに関する譲渡特例の適用を受けないこととされ、両方の特例の併用に制限があります。会計検査院によると、これは「旧住居の譲渡に伴いこれに代わる新たな居住用財産(新住居)を新築又は取得(取得)することが通常であり、旧住居の譲渡に譲渡特例等の適用を受けているにもかかわらず、併せて新住居の取得について住宅ローン控除特例を認めることは適当ではない」趣旨だとしています。

ところが、譲渡特例は、住まなくなってから3年目の年末までに譲渡すると適用が可能なため、住宅ローン控除の適用を受けて新居に住んでから3年目に旧住宅を譲渡すると住宅ローン控除と譲渡特例の両方の適用を受けることができるというわけです。

これについて、会計検査院は「制度の趣旨に鑑みると合理的ではなく、必ずしも必要最小限のものとなっていない」と指摘しています。税制改正に反映されるかどうか注目されます。

[ 遠藤 純一 ]

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