Topics
TACTトピックス

特定事業用資産の買換え特例・取壊費用で争い 審判所、買換資産の取得に要した費用と認めず

2019.04.08

個人で不動産貸付業をしていた人が、「特定事業用資産の買換特例」を適用するにあたって、建替えで新築する賃貸住宅の家屋を買換資産とした際、税金トラブルに見舞われました。

その税金トラブルは、買換資産の取得に要した費用の中に古家の取壊費用を含めたところ、税務署から否認されたというものです。この事案は国税不服審判所での審査請求に発展しました(平成30年1月30日裁決)。

裁決書によると、このトラブルは、副業に不動産賃貸業を行っていたAさんが、伯母から死因贈与された古家付きの400㎡あまりの土地を利用し、3階建ての賃貸住宅に建て替えることに起因するものです。Aさんは、すでに持っていた賃貸住宅の土地建物を売却して、建替え後の新築賃貸住宅を
買換資産として特定事業用資産の買換特例の適用を受ける旨の申告をしました。

その際古家の取壊費用300万円余りを買換資産の取得に要した費用に加えて申告したといいます。しかし税務当局が否認したため、争いになりました。

主な争点は、取壊費用が本件買換資産の取得価額に含まれるか否かです(これ以外の争点はここでは割愛します)。

審判所は、特定の事業用資産の買換え特例を定めた租税特別措置法第37条第1項に規定する買換資産の「取得価額」は結局のところ、「所得税法第38条に規定する「資産の取得に要した金額」と同義であると解するのが相当」としました。

そのうえで審判所は過去の判例から「資産の取得に要した金額」には、「当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか登録免許税、仲介手数料等当該資産を取得するための付随費用の額も含まれるが、他方、当該資産の維持管理に要する費用等居住者の日常的な生活費ないし家事費に属するものはこれに含まれないと解するのが相当」としました。

このことを前提に審判所は、「取壊費用について買換資産の取得価額には含まれない」と判断しました。理由は概略次通りです。

1、「取壊費用は、買換資産の新築に当たって新築用地である土地上に所在していた古家等を取り壊すための支出であって買換資産の価値を変動させるものではないから買換資産の客観的価格を構成すべき取得代金ではないことは明らか」。

2、「取壊費用は買換資産である建物の取得に通常要するものではないことから、これに要した費用は、買換資産を取得するための付随費用ということもできない」。

資産の組み換えで、特定の事業用資産の買換え特例を利用する場合には注意が必要です。

[ 遠藤 純一 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。