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民法(相続関係)の見直しに伴う特別寄与料の相続税法上の扱い

2019.03.25

民法の新たな条文で、特別寄与料について次のように規定されています。
「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる」(民法1050条第1項)。

たとえば、夫の父親の世話を夫の妻、つまり嫁がやっていた場合で、夫の父が亡くなった場合、嫁と父が養子縁組していなければ、嫁は夫の父の相続開始に伴う遺産分割では「外野」扱いとなります。しかし、特別寄与料として請求できるようになるというわけです。

特別寄与料の決め方は、「当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる」(同条第2項)。

金額については「家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」
(同条第3項)。

ただし「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」(同条第4項)。

特別寄与料の負担は相続人が負担することとなり、「相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する」(同条第5項)となっています。

これを受けて平成31年度税制改正では「特別寄与料が確定した場合には、特別寄与者が被相続人から特別寄与料に相当する金額に付き遺贈を受けたものとして、相続税の課税対象とされました。

相続税の申告は通常、被相続人が亡くなってから10か月以内の申告することになっていますが、特別寄与料がその間に決まらないこともあり得ます。そこで、申告期限の後で、特別寄与料が決まった場合には、特例寄与者はそれを知った日から10か月以内に相続税の申告をすることとされました。
反対に特別寄与料は相続人の相続税の課税価格から控除されることになります。

また、申告期限後に特別寄与料により申告内容に異同が生じた場合には「更正の請求」で払い過ぎた相続税を取り戻すことができるようになります。

この改正は、改正民法の段階的施行となる特別寄与料制度と同時に2019年7月1日から施行の予定です。

[ 遠藤 純一 ]

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