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市街地農地でも、相続税評価額が10%減 国税不服審判所、道路と高低差あれば適用認める

2018.02.16

土地の相続税評価をする場合に、国税庁の財産評価基本通達そのものには定められてはいませんが、取扱いで認められているのが、「10%評価減」です。

これは、前面道路と土地に大きな段差がある場合や、振動、騒音などにより付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地の部分に適用できるものとされています。

ただし、こうしたマイナス要因が路線価に反映されている場合には、重ねて減額が認められることはありません。

最近の裁決事例では、路線価の敷設された普通住宅地区にある市街地農地についても、この10%評価減の適用が認められてケースがありました(平成29年4月7日)。

裁決書によると、納税者Aさんは、路線価地域にある畑と建物のある土地(以下、畑と土地を合わせて問題の土地という)を相続しました。問題の土地は、南側にある路線価のある道路と直接接しておらず、この土地に行くためには、赤道や他人の私道を通らなくてはならない、いわゆる無道路地でした。さらに道路からおよそ4mも高い位置にあったことから、相続税申告では財産評価基本通達に基づいて算出した評価額からさらに60%を引いた金額で相続税の申告をしていました。

しかし税務署からの指摘でいったんAさんは、10%評価減を適用し約1,600万円で修正申告をしました。ですが、あとになって不動産業者からの意見を聞いて、問題の土地の評価額は1,000万円が適正だとして更正の請求をしたことから最終的に国税不服審判所の審査請求に及んだものです。

国税審判所は、問題の土地の評価額が1,000万円などとするAさんの主張については、裏付けとなる具体的な数値や客観的な根拠が何も示されていないため、適正な時価と認められないとしました。

しかし国税不服審判所は「10%評価減」の取扱いについて「市街地農地の評価について宅地に比準して評価する旨定めていることからすると、市街地農地についても、宅地と同様に本件取扱いの適用があると解すべき」と判断、問題の土地と「周辺の一連の土地の高低差を比較検討してもなお著しい高低差があり、(問題の土地)全部について、その利用価値が付近にある他の土地の利用状況からみて著しく低下していると認められる」として10%評価減の適用を認めています。

[ 遠藤 純一 ]

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