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No.989

母の二次相続に係る申告後、 一次相続で申告不要の父からの遺産を母が相続しないとする更正の請求は可能か

1.はじめに

相続税がかからない遺産額だったので、父からの一次相続では分割協議もせずやり過ごすことは、ありがちなことです。しかし母からの二次相続では相続税申告に迫られて、とりあえず法定相続分で申告したというケースも少なくないでしょう。こうしたなか、二次相続の申告後に、一次相続の際に母が父から遺産を相続していないことにする遺産分割をしたらどうでしょうか?その分、二次相続で課税される相続財産が減るはずです。そこで、二次相続にかかる相続税の申告について、相続税の減額を求めて更正の請求ができたら...と考えた人がいました。しかし国税不服審判所は、この更正の請求を認めませんでした(国税不服審判所令和7年10月29日公開裁決)。今回はこの事案のポイントを探ります。

2. 事案の概要

(1)父からの相続(一次相続)の状況

父は、平成26年10月に死亡。このときの法定相続人は、配偶者である母と、国税不服審判所(以下、「審判所」という。)で争った請求人らの4人。このときは相続税の課税価格の合計額が基礎控除額以下だったので、相続税の申告はしていない。

(2)母からの相続(二次相続)の状況

母は平成28年3月に死亡。このときの法定相続人は、請求人らの3人だった。このときの相続税の申告は、母からの遺産分割が成立しなかったため、法定相続分の割合で遺産を取得したものとして(相続税法55条)、相続税の申告書を法定申告期限までに申告した。ただ、2人は父から母が相続した遺産について申告していなかった。このため後に修正申告等をしていた。

(3)遺産分割協議の状況

相続人3人は令和6年3月22日付で、概ね次のような内容の遺産分割を成立させた。
①一次相続では相続人3人が父の財産を3分の1ずつ相続、亡き母に相続させる財産はないこととした。
②二次相続では相続人3人が父の財産を3分の1ずつ相続し、債務・葬式費用等は3分して負担する。

(4)以上を受け、相続人は二次相続の相続税のかか

る遺産が減少し、税額も減ることから令和6年5月、税務署長に相続税の減額を求めて「更正の請求」をした。

(5)同年8月、税務署長は更正の請求を認めなかったため、相続人は審判所に更正の請求ができるものとして審査請求した。

3. 審判所の判断

審判所はまず、次の法律上の規定を確認しました。

①遺産分割されていないときの相続税申告について、法定相続分に従って遺産を取得したものとしてその課税価格を計算して申告をするものとされていること(相続税法55条)。
②申告後に遺産分割協議が整い、法定相続分に従って計算された課税価格と異なって、課税価格・相続税額が過大となったときは、4月以内に、更正の請求をすることができること(相続税法32条)。

この趣旨について審判所は「申告の後に遺産分割が行われて各相続人の取得財産が変動したという相続税特有の後発的事由が生じた場合において、(中略)遺産分割後の一定の期間内に限り、上記後発的事由により上記申告に係る相続税額等が過大となったとして更正の請求をすること及び当該請求に基づき更正がされた場合には他の相続人の相続税額等に生じた上記後発的事由による変動の限度で更正をすることができることとした」と指摘、「当初の申告に存在するとされる過誤の是正を求めることを目的とするものではないと解するのが相当」との考え方を示しました。
このことから、審判所は「未分割の遺産を分割した結果、既に確定した課税価格及び相続税額が過大になるか否かの判断に当たって、算定の基礎となる遺産の価額は、申告(その後に更正があった場合にはその更正)により確定した遺産の価額を基礎とすべきであり、申告(その後に更正があった場合にはその更正)により確定した遺産の価額を前提としない更正の請求は、相続税法第32条第1項第1号に基づく更正の請求に当たらないというべきである」と判断の方針を明らかにしました。
具体的には「申告により確定した遺産の価額を前提としない更正の請求は、相続税法第32条第1項第1号に基づく更正の請求に該当しないところ、請求人らは、本件申告等により確定した遺産の総額を前提とせずに、更正の請求を行っているのであるから、同号に規定する事由に基づく更正の請求には該当しない」と判断しています。 

[ 遠藤 純一 ]

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