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TACTニュース
No.987

いわゆる事故物件の相続税評価で10%評価減の適用が認められるか?

1. はじめに

古い賃貸住宅で人が死亡し長期間放置されていた物件、いわゆる事故物件を相続した人が、その物件の相続税評価額の減額を求めて、国税不服審判所(以下、審判所という。)に審査請求をした事案が情報公開により、明らかになりました(令和7年12月1日裁決、他の争点は割愛します。)。

2. 事故物件とは?

事故物件は不動産取引でしばしば問題となるものです。公式の定義ではないようですが、およそ過去に事故などにより人が死亡し長期間放置されるなどして特殊清掃が必要になった物件で、忌避されるような心理的瑕疵があり取引に影響を及ぼすものとされています。
国土交通省が令和3年10月にまとめた「宅地建物取
引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、住宅において、人の死が発生した事案で取引の当事者が契約するかどうかの判断に大きな影響を及ぼす可能性がある点に配慮。
特に宅地建物取引業者が住宅の売買・賃貸借においてその事実について告知すべきかどうかといったケースを整理しています。この意味合いでは、取引に影響する可能性がある点、不動産の相続税評価額への波及も想定されるでしょう。

3. 10%減の取扱いとは? 

仮に、土地の取引に影響するとした場合、考えられるのが相続税の評価上の「10%評価減」の取扱いです。これは、土地の相続税評価の取扱い上、付近の土地の利用状況と比較して著しく利用価値が低下している土地に適用できるとされています。国税庁のホームページでは次のような記載があります。

(1)道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(2)地盤に甚だしい凹凸のある宅地
(3)震動の甚だしい宅地
(4)(1)から(3)までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

ただし適用が認められるのは、①こうした減価要因が路線価または固定資産評価額・倍率に反映されていないこと、②現に減価要因が生じていること、③この減価要因により実際に取引金額に影響が出ていることの3つを満たすのがポイントとされています(国税不服審判所令和2年6月2日裁決)。

4. 問題の土地に関する事情等

相続人が相続した問題の土地は、相続の開始日において、賃貸共同住宅の敷地として使用されていましたが、賃借人はいませんでした。
相続人によると、平成30年7月から8月頃、この土地の建物の賃借人が、居室内で死亡していたことが近隣住民からの異臭を原因とする通報により発覚。相続人は前記ガイドラインを引き合いに、この建物では特殊清掃は行われなかったが、異臭が近隣住民の記憶に残っていることから、この土地は取引の際、こうした事情の告知が必要な事故物件に該当すると考え、「忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの」に該当し、利用価値が著しく低下しているものとして相続税の減額を求めて令和6年7月、更正の請求をしました。しかし、税務署が減額を認めなかったことから審判所に判断を仰ぐことになったものです。

5. 審判所の判断

審判所はまず、更正の請求においては「更正の請求を基礎付ける理由の立証責任は請求人にある」との見地に立って、10%評価減の取扱いについて、本件の場合「忌み等を理由とする減額評価が認められるためには、忌み施設が存すること等の事情による当該宅地の取引金額への影響が、当該宅地の減額評価を正当化する程度に具体的なものであり、この影響が当該宅地の評価に用いる路線価において考慮されていないことを要するというべき」と立証の方向性を示しました。
これを踏まえ審判所は、更正の請求時、建物内で賃借人の死亡により問題の土地の利用価値が著しく低下していることを示す客観的な証拠を提出しなかったことを指摘。
次いで審判所は、前記ガイドラインは宅地建物取引業者が取るべき対応を取りまとめたものであり、ガイドラインの定めに当てはまるからといって直ちに10%評価減の取扱いが認められるものではないとしたうえで、相続人が、具体的に問題の土地の価額にどのような影響を及ぼすのか、合理的な理由を示していないと指摘しました。
最終的に「建物の賃借人が居室内で死亡したことが近隣住民からの通報により発覚したという事実をもって、問題の土地の取引金額への影響が、減額評価を正当化する程度に具体的なものであるとは認められない」として、10%評価減の適用は認めませんでした。

[ 遠藤 純一 ]

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