【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税・所得税の取扱い
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【問】 令和8年1月に亡くなった甲さんは、平成25年に配偶者の乙がX生命保険会社と契約し、被保険者乙、死亡保険金受取人A(甲の長男)との定めのある生命保険契約(満期・解約返戻金あり)の保険料を全て負担していました。この生命保険契約に係る税務上の取扱いついて、以下の通り質問します。 【問1】甲さんに係る相続税の計算上、この生命保険契約に関する権利はどのような取扱いになるのでしょうか。 |
【回答】
1.結論
(1)【問1】の場合、生命保険契約に係る権利は本来の相続財産ではありませんが、相続税の計算上は、契約者の乙が甲からこれを相続により取得したものとみなされ、課税対象とされます。
(2)【問2】の場合、乙が取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その返戻金の額から甲が負担した保険料の額と特別控除額を控除した額の2分の1相当額が所得税の課税対象とされます。
2.解説
(1) 被相続人以外の者が保険契約者の生命保険契約で、被相続人が保険料を負担した場合の生命保険契約に関する権利の相続税の取扱い(【問1】)
①みなし相続課税
相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約のうち、被相続人以外の者が保険契約者である場合、その生命保険契約に関する権利は本来の相続財産には該当しません。ただし、被相続人以外の者が保険契約者で、かつ被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利のうち一定のものについては、その契約者が生命保険契約に関する権利を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされます(相続税法3条1項3号)。この場合の生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始時においてその契約を解約するとした場合に支払われる解約返戻金の額を基に計算されます(財産評価基本通達214)。
②本問へのあてはめ
本問の場合、生命保険契約に関する権利は、甲に係る相続税の計算上、契約者の乙が甲から相続により取得したものとみなされ、その権利の価額は、その生命保険契約に係る解約返戻金を基に計算されます。
(2)甲の死亡後、生命保険契約の契約者である乙が、その契約を解約して返戻金を取得した場合の所得税の計算(【問2】)
①所得税の取扱い
個人が生命保険契約の解約返戻金を取得した場合において、保険料負担者と保険金受取人が同一人のときは、源泉分離課税の対象となる一時払養老保険等に該当する場合を除き、返戻金から保険料と特別控除額(最大50万円)を控除後の金額が一時所得とされ、その2分の1相当額に対し所得税が課税されます(所得税法22条2項2号、34条、所得税基本通達34-1(4))。
②一時所得の金額の計算上控除する保険料
生命保険契約等に基づく解約返戻金が一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等が、その返戻金を取得した者(乙)自身が負担したものに限られるのか、それとも返戻金の受給者以外の者(甲)が負担していたものも含まれるかについては法令上は明確にされておらず、疑問が生じます。
この点について、所得税基本通達34-4(2)及びその逐条解説では、解約返戻金等の一時金の支払を受けた者が負担しなかった保険料等がある場合でも、保険契約者や保険金受取人以外の者が保険料を負担したときは相続の際に相続税の課税等がされることから、原則として保険契約に係る保険料等の総額を一時所得の金額の計算上、控除する旨を定めています。
③本問へのあてはめ
乙が生命保険契約に基づき取得した解約返戻金は所得税の一時所得とされ、その金額の計算上、保険契約に係る保険料の総額(=甲が負担した保険料)を控除します。
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