【Q&A】被相続人が保険料の全額を負担した生命保険契約に係る相続税の取扱い
【問】 令和7年6月に亡くなった甲さんは、生前に次の①~③の生命保険契約(全て満期・解約返戻金あり)の保険料を全て負担していました。 |
【回答】
1.結論
(1)【問1】の場合、①の契約の契約者は被相続人甲であることから、その契約に係る権利は本来の相続財産として相続税の課税対象とされます。一方、②の契約に係る権利については本来の相続財産ではありませんが、相続税の計算上、契約者のAが甲からこれを相続により取得したものとみなされ、課税対象とされます。
(2)【問2】の場合、③の入院給付金は乙が受取人として支払われたことから、本来の相続財産に該当せず、甲に係る相続税は課税されません。
2.解説
(1) 被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利に係る相続税の取扱い(【問1】)
①被相続人が保険契約者の場合
生命保険契約に関する権利は、保険契約者が有するものであり、被相続人が契約者であって、かつ保険料の全額を負担していた場合は、その権利は本来の相続財産となります。したがって、①の契約に係る権利は本来の相続財産として相続人による遺産分割協議の対象となり、甲に係る相続税の課税対象とされます。
②被相続人以外の者が保険契約者の場合
被相続人以外の者が保険契約者である場合は、その生命保険契約に関する権利は本来の相続財産には該当しません。ただし、被相続人以外の者が保険契約者で、かつ被相続人が保険料を負担した生命保険契約に関する権利のうち一定のものについては、その契約者が生命保険契約に関する権利を相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされます(相続税法3条1項3号)。したがって、②の契約に係る権利は、甲に係る相続税の計算上は契約者であるCが、甲から相続により取得したものとみなされ、課税対象とされます。
(2) 被相続人以外の者が受取人である入院給付金に係る相続税の取扱い(【問2】)
相続税法3条1項1号に基づき相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象とされる生命保険金は、被保険者の死亡を保険事故として支払われる死亡保険金に限られます。被保険者の傷害 (死亡の直接の基因となった傷害を除く。)、疾病その他これらに類するもので死亡を伴わないものを保険事故として支払われる保険金又は給付金は、その被保険者の死亡後に支払われたものであっても、相続税の課税対象には含まれません(相続税法基本通達3-7)。よって甲に係る相続税の計算上、乙が受取った入院給付金は課税対象とされません。なお、入院給付金の受取人が被保険者の甲で、その給付金が甲の死亡後に支払われた場合は、本来の相続財産として相続税が課税されます。
(注)乙が受取った入院給付金は、相続税法5条1項に定める贈与により取得したものとみなされる保険金等に該当しないことから、贈与税は課税されません。さらにこの入院給付金は、所得税法9条1項18号と同施行令30条1項が定める非課税とされる保険金等に該当することから、所得税も課税されません(所得税基本通達9-20、9-21)。
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