News
TACTニュース
No.830

相続税法における養子の取扱い

1. はじめに

タクトニュースNo.826では、民法における養子の取扱いをご紹介しました。民法上、養親が死亡した場合には、その養子縁組が普通養子縁組であったとしても特別養子縁組であったとしても、養子はその養親の相続人(子)として取り扱われ、その相続分は実子と変わりません。
一方、税務上は、むやみに養子の数を増やすことで公平性が損なわれること等があるため、普通養子縁組の場合には一定の制限規定が設けられています(下記2.参照)。また、被相続人の直系卑属(孫やひ孫)が養子である場合には、その者の相続税額については、原則として、相続税額が2割加算されます(下記3.参照)。本稿では、これらの取扱いをご紹介します。

2. 法定相続人の数

(1) 法定相続人の数が影響する計算項目

相続税の計算上、次の項目については、法定相続人の数を基に行います。

項目計算式
生命保険金の非課税限度額 500万円×法定相続人の数
死亡退職金の非課税限度額 500万円×法定相続人の数
遺産に係る基礎控除額 3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の総額 ① 課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分=XXX(千円未満切捨)
② ①×税率

(2) 普通養子縁組による養子がいる場合の数の制限

上記(1)の法定相続人の数を民法どおりにカウントすると、むやみに養子の数を増やすことで、相続税回避が可能となってしまいます。
そこで、普通養子縁組の場合には、上記(1)の計算をするときの法定相続人の数に含める被相続人の養子の数は、次のとおり、一定数に制限されています。

・ 実子あり→1人まで
・ 実子なし→2人まで

ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、その原因となる養子の数は、上記の養子の数に含めることはできません。

(3) 実子として扱われる者

次のいずれかの者は、実子として取り扱われます(すなわち、上記(2)の数の制限は受けず、すべて法定相続人の数に含まれます)。

①特別養子縁組により被相続人の養子となった者
②被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
③被相続人と配偶者との婚姻前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となった者で、その婚姻後にその被相続人の養子となったもの
④被相続人の実子、養子又はその直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため相続人となったその者の直系卑属

3. 相続税額の2割加算

(1) 相続税額の2割加算とは

相続、遺贈又は相続時精算課税贈与により財産を取得した者がその被相続人の一親等の血族(代襲相続人となったその被相続人の直系卑属を含む)及び配偶者以外の者である場合には、その者の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます(これを相続税額の2割加算といいます)。

(2) 養子の取扱い

被相続人の養子は、一親等の法定血族であることから、相続税額の2割加算の対象とはなりません。ただし、被相続人の養子となっている被相続人の直系卑属(孫やひ孫)は、その者が代襲相続人となっている場合を除き、相続税額の2割加算の対象になります。

(3) まとめ

相続税額の2割加算の適用対象者をまとめると、次表のとおりです。

主な親族2割加算
配偶者 ×
×
実子 ×
養子 代襲相続人以外
代襲相続人 ×
孫・ひ孫 養子以外 代襲相続人以外
代襲相続人 ×
養子 上記「子」の「養子」欄参照

〇・・・対象、×・・・対象外

[ 宮田 房枝 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。