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TACTニュース
No.810

個人が災害により住宅や家財等に被害を受けた場合の所得税等の特例

1.概要

個人が災害により被害を受けた場合の所得税に関する主な特例措置をご紹介します。なお、本号において、所得税には復興特別所得税を含むものとします。

2.申告期限・納期限の延長

災害により所得税の申告・納税等をその期限までにできない場合には、やむを得ない理由がやんだ後相当の期間内に、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄税務署長に提出し、その承認を受けることにより、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。

3.納税猶予

災害により財産に相当な損失を受けた場合には災害がやんだ日から2か月以内に、「納税の猶予申請書」を所轄税務署長に提出し、その承認を受けることにより、損失の程度に応じて納期限から1年以内の期間で、所得税の納税の猶予を受けることができます。

4.所得税の軽減又は免除

個人が災害により住宅や家財等に損害を受けた場合には、確定申告において、次の(1)又は(2)のうちいずれか有利な方法により、所得税の軽減又は免除を受けることができます。

(1)所得税法に定める雑損控除

①取扱い

居住者、又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族でその年の総所得金額等が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)の者の有する住宅や家財等の対象資産(下記②)につき、災害による損失が生じた場合には、雑損失の金額(下記③)をその居住者のその年分の総所得金額等から控除することができます。また、その年の総所得金額等から控除しきれない部分は、翌年以後3年間に繰り越して、各年分の総所得金額等から控除(繰越控除)することができます。

②対象資産の範囲
対象対象外
生活に通常必要な資産(右記のものを除く) 棚卸資産、事業用固定資産、山林、趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で保有する資産、貴金属・書画・骨董等で1個又は1組の価額が30万円超のもの等

③雑損失の金額

(a)差引損失額※-総所得金額等×10%
(b)差引損失額※のうち災害関連支出の金額-5万円
(c)雑損失の金額=上記(a)と(b)のうち多い金額

※「差引損失額」の計算

○a 損失の金額
○b 災害関連支出の金額(取壊し・除去等の費用)
○c 保険金等で補てんされる金額
○d 差引損失額=○a+○b-○c

(2)災害減免法に定める所得税額の軽減又は免除

①取扱い

災害により甚大な被害を受けた下記②の者については、その年の所得税額が下記③のように軽減又は免除されます。

②対象者

災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金等により補てんされる金額を除く)がその時価の2分の1以上である者で、被害を受けた年分の合計所得金額が1,000万円以下であるもの。

③軽減又は免除される額
合計所得金額軽減 又は 免除される所得税額
500万円以下 所得税額の全額
500万円超 750万円以下 所得税額の2分の1
750万円超 1,000万円以下 所得税額の4分の1

5.住宅ローン控除

災害によって被害を受けたことにより居住の用に供することができなくなった住宅用家屋については、残りの適用年においても、引き続き、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
また、一定の場合には、被災した住宅用家屋及び一定期間内に新たに取得した住宅用家屋の双方について、住宅ローン控除の適用を受けられることがあります。

6.個人事業者が被災した場合

災害により事業用資産等に被害を受けた個人事業者は、その損失の金額を事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入することができます。また、白色申告であっても、純損失の金額のうち被災事業用資産の損失部分の金額は、翌年以後3年間に繰越控除できます。

7.最後に

税制の特例措置に限らず、各種支援制度の適用を受けるために「り災証明」(被災者からの申請に基づき市区町村が発行する被害状況の証明書)の添付又は提示が必要となることがあります。認定に影響する可能性がありますので、片付けをする前に被災状況を写真撮影しておくことをおすすめします。(宮田 房枝)

[ 宮田 房枝 ]

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