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TACTニュース
No.783

準確定申告において必要経費に算入することができる固定資産税

【問】

2019年3月31日に父が死亡しました。父が所有していた賃貸不動産は長男の私が相続し、賃貸を継続しています。この賃貸不動産に係る固定資産税の納税通知書は4月3日に届きました(年税額120,000円)。
固定資産税は1月1日現在の所有者に対して課されるものであるため、父の所得税の準確定申告に際し、不動産所得の金額の計算上、納税通知書に記載されている固定資産税の全額120,000円を父の必要経費とすればよいのでしょうか?

【回答】

1.概要

固定資産税は、毎年1月1日現在の固定資産の所有者に対して課税されます(地法343、359)。
これに対し、所得税の不動産所得の金額の計算上、固定資産税は、納税通知書が届いた後でしか必要経費に算入することができず、死亡したタイミングにより、必要経費に算入できる金額が異なります。

2.必要経費に算入する固定資産税(所基通37-6)

その年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入する固定資産税は次のとおりです。

(1)原則

賃貸不動産に係る固定資産税のうち、その年12月31日(年の中途において死亡した場合には、その死亡の時)までに納付すべきことが具体的に確定したものが必要経費となります。
すなわち、年の中途において死亡した場合、相続開始時に納税通知書が届いていればその賃貸不動産に係る固定資産税の全額を被相続人の必要経費に算入しますが、相続開始時に納税通知書が届いていなければ1円たりとも必要経費に算入することはできません。

(2) 特例

上記(1)にかかわらず、賃貸不動産に係る固定資産税のうち、各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することもできます。
すなわち、年の中途において死亡した場合、相続開始時に納税通知書が届いていれば、その賃貸不動産に係る固定資産税のうち、相続開始時における納期到来分又は納付済分を被相続人の必要経費に算入すること

ができます(相続開始時に納税通知書が届いていなければ、この特例の適用はありません)。

3. 相続があった場合の取扱い(まとめ)

上記2.より、被相続人及び相続人の必要経費に算入する固定資産税についてまとめると次のとおりです。

納税通知書の到着時期※被相続人相続人
相続開始前 次のいずれかを選択 被相続人の選択に応じ、次の金額
(1) 全額 0
(2) 納期到来分 左記の残額
(3) 納付済分 左記の残額
相続開始後 0
(相続開始時に納付すべきことが具体的に確定していないため)

次のいずれかを選択
(1) 全額
(2) 納期到来分
(3) 納付済分

※ 納税通知書の発送時期は、自治体により異なります。東京23区内の場合、2019年は6月3日に発送される予定ですが、自治体によっては4月上旬に発送済みのところもあります。

4.本問へのあてはめ

(1)父の必要経費に算入する固定資産税

本問の場合、父が死亡した3月31日に納税通知書は届いていませんので、父の準確定申告において必要経費に算入することができる固定資産税はありません。

(2)長男の必要経費に算入する固定資産税

本問の場合、長男の確定申告において必要経費に算入する金額は、次のいずれかから選択することができます。
①全額(12万円)
②(12月31日までに)納期が到来した分
③(12月31日までに)納付済みの分

5.最後に

準確定申告における固定資産税の取扱いは、誤りが多い部分です。
相続開始時に納税通知書が届いていないにも関わらず、その全額を必要経費に算入したり、相続前後の期間で月数按分をして必要経費に算入したりすることのないよう、留意が必要です。

[ 宮田 房枝 ]

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