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TACTニュース
No.772

【Q&A】住宅以外の建物の賃貸借契約による家賃と更新料に係る消費税の経過措置

【問】

当社では、2016年10月1日より所有する建物を、飲食業を営む㈱Aに店舗として賃貸しています。当社とA社との建物賃貸借契約では、[1]貸付期間は2019年9月30日までの3年間、[2]2019年5月31日の解約申出期限までに解約の申出がない場合は契約が3年間継続、[3]契約の継続に際しA社は、2019年5月31日までに1ヶ月分の家賃相当額の更新料を当社に支払う旨が定められています。
2019年10月以降に生じる家賃であっても、消費税率が10%ではなく現在の8%が適用される経過措置があるそうですが、当社はその適用を受けることができますか。また、上記[3]より当社がA社から更新料を受取る場合には、その更新料に係る消費税率は8%が適用されますか。

【回答】

1.家賃の取扱い

(1)住宅以外の建物の家賃に係る消費税率の経過措置

建物(住宅を除く。以下同じ。)の家賃のうち、2019年10月1日以後の貸付けに係るものについては、原則として10%税率が適用されます。
ただし、2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した建物の賃貸借契約に基づき、2019年10月1日前から2019年10月1日以後にかけて引続きその契約に係る建物の貸付けを行っている場合、その契約の内容が一定の要件に該当するときは、2019年10月1日以後に支払いを受けるべき賃貸料(家賃)に係る消費税について、引上げ前の8%税率が適用される経過措置が設けられています(改正法附則5条4項、16条等)。

(2)建物の賃貸借契約に自動継続条項がある場合

自動継続条項のある建物の賃貸借契約において、解約するときは一定の期日(解約申出期限)までに申し出る旨の定めがある場合には、解約申出期限を経過したときに貸主と借主の間で新たな契約の締結があったものと考えます(参考:国税庁「経過措置の取扱いQ&A具体的事例編」問27)。2013年10月1日から2019年3月31日までに解約申出期限が経過して自動継続された契約であれば(1)の下線部の要件を満たし、2019年10月1日以後に行われる貸付けであっても、一定の要件を満たすことにより (1)の経過措置が適用されます。

(3)結論

本問の契約の場合、その締結時期(=解約申出期限)が2019年5月31日であり、(2)の「2019年3月31日までに解約申出期限が経過して自動継続された契約」に該当しないので、(1)の経過措置の適用はありません。よってA社から受取る2019年10月1日以降分の家賃に係る消費税については、原則通り10%税率が適用されます。

2.更新料の取扱い

(1)消費税における更新料の取扱い

消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等を課税の対象としています(消費税法4条)。この「資産の譲渡等」には、「資産の貸付け」が含まれ(同2条1項8号)、さらに「資産の貸付け」には、資産に係る権利の設定その他他の者に資産を使用させる一切の行為(一定のものを除く)が含まれます(同2項)。
 建物の賃貸借契約の更新は、資産の利用に係る権利の設定行為であることから「資産の貸付け」に含まれ、更新料は資産の譲渡等の対価に該当します(同基本通達5-4-3)。

(2)更新料における資産の譲渡等の時期

消費税の納税義務は課税資産の譲渡等をしたときに成立します(国税通則法15条2項7号)が、消費税法にはその「譲渡をした時」についての定めがありません。実務上は、資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける更新料等の額(前受けに係る額を除く。)については、「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」を、原則的な資産の譲渡等の時期として取扱います(「平成30年度消費税法基本通達逐条解説」大蔵財務協会510頁、同通達9-1-20、9-1-23参照)。したがって、更新料の支払を受けるべき日が2019年10月1日以後となる場合、その課される消費税については10%税率が適用されます。

(3)結論

本問の契約の場合、更新料の支払を受けるべき日が2019年10月1日よりも前(同5月31日)であることから、A社から受取る更新料に係る消費税率については、8%税率が適用されます。
(注)改正法:社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための 消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)

[ 山崎 信義 ]

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