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No.764

法人税法における益金の額(収益の額)の計上基準・・・同法22条の2

2018.12.07 法人税

1 はじめに

法人税法は、各事業年度の所得の金額をその益金の額からその損金の額を控除して算定すると定めています。益金の額とは、簡単にいうと資産の販売や有償又は無償による譲渡又は役務の提供などによる収益の額であり、損金の額とは、同じく原価、販管費、損失です(同法22条1項~3項)。
なお、同条2項は、資産の販売や譲渡等に限らず、無償による資産の譲受けその他の取引をも含む収益の額が益金の額に算入されることを定めています。平成30年3月に、収益認識に係る会計基準やそれに係る適用指針が公表されたことを契機に、法人税法においても、平成30年度の税制改正で、(1)収益の額として益金の額に算入する金額と(2)収益の額を益金の額に算入すべき時期(事業年度)を定める22条の2が創設され、それまで、一般に公正妥当な会計処理の基準を考慮して通達や判例・通説で整理されてきたそれらの通則的なルールが、同条により明定されました。

2 収益の額として益金の額に算入する金額

22条の2の4項は、次の3により決められる事業年度において、「資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」といいます。)に係る収益の額として益金の額に算入する金額は、原則として、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とする」旨を規定しています。この「引渡しの時における価額」及び「通常得べき対価の額」とは、その資産又は役務の'時価'のことと解されますが、同条5項はこれらについて、その資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れやその資産の買戻しその可能性が(あるとしても)ないものとした価額とする旨定めています。 
なお、値引きや割り戻しについては客観的合理的に見積もられた金額であれば、それらの価額から控除することは認められます。益金の額に算入すべき収益の額についての上記4項の定め(原則)の例外としては、例えば、リース譲渡の収益と費用(63条)や工事の請負に係る収益と費用(64条)などがあり、それは下記3でも同様です。

3 収益の額を益金の額に算入すべき時期

表題のことについて、22条の2の1項は、資産の販売等に係る収益の額は、原則として、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度に益金の額に算入する旨を規定しています。それによって益金算入時期についての原則となる基準が明確化されました。そのうえで、同条2項は、その原則の特則として、資産の販売等に係る収益の額につき、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、その資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日など上記引き渡し・提供の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、その経理した収益の額は、原則として、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されることを定めています(2項基準による益金算入)。例えば、電気・ガス事業における検針日基準による収益計上は、引渡し等の日による収益計上ではありませんが、法人が確定した決算において検針日基準により収益として計上・経理(以下「収益経理」といいます。)すれば、2項基準による益金算入としてそのまま認められるということです。
 さらに、同条3項は、2項基準による益金算入の要件である〈収益経理をすること〉について、その資産の販売等に係る同項に規定する近接する日の属する事業年度の確定申告書に、その資産の販売等に係る収益の額で収益経理がされなかったものを益金算入する旨の記載(いわゆる申告調整のことで、具体的には別表四の「所得の金額の計算に関する明細書」の加算欄に記入することです。)があるときは、その記載された額は収益経理されていないにもかかわらず、収益経理をしたとみなす旨規定しています。つまり、2項基準による益金算入を(選択)している収益項目につき、収益経理漏れとなった場合でも、申告調整をすれば、2項の収益経理をしたものとして扱われ、1項による引渡し日基準で処理される(具体的にいうと、期末までに引渡し=消費済みの電気等に係る料金を益金算入漏れとされる)ことはない、ということです。
なお、この'みなし'は、その申告調整の理由とする収益計上の時期に係る基準が一般に公正妥当と認められる会計処理に従ったものと'みなす'ものではありません。したがって、その前提として申告調整(加算)の理由となるその基準が、一般に公正妥当と認められるものである必要があります。

[ 亀山 孝之 ]

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