税理士法人タクトコンサルティングは相続対策・贈与・譲渡・事業承継など資産税専門の会計事務所です。相続税申告、遺産分割、生前贈与、民事信託・商事信託等、相続コンサルティング専門の税理士集団です。

  • ホーム
  • TACTニュース
  • 贈与税の新・事業承継税制:後継者が有する持株会社が筆頭株主の場合の適用の有無

TACTニュース

2018.07.09No.744 贈与税の新・事業承継税制:後継者が有する持株会社が筆頭株主の場合の適用の有無

カテゴリー:事業承継税制改正

【問】

X社の前・代表取締役の甲さんは、X社の発行済議決権株式の全部を保有していましたが、平成27年に議決権総数の60%に相当するX社株式を、Y社(X社の現・代表取締役である甲さんの長男が同社の全ての議決権を保有)に譲渡しました。
平成30年に甲さんが保有する議決権総数の40%に相当するX社株式を長男に贈与した場合、その贈与により取得したX社株式について、長男は非上場株式等についての贈与税の新・事業承継税制(以下「贈与税の特例措置」)の適用を受けることができますか。 

【回答】

1.結論

平成30年に甲さんから長男が贈与によりX社株式を取得した時点で、同社の議決権を最も多く有するのはY社であり、長男は「その贈与の時において、その個人(=受贈者となる長男)が有する対象会社の株式に係る議決権の数が一定の特別の関係のある個人(親族等)や法人(以下「特別関係者」)のいずれの者の有する議決権の数以上であること」という、特例経営承継受贈者の要件(2(2)の「筆頭株主要件」)を満たさないことから、贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

2.理由

(1)贈与税の特例措置の概要

中小企業等の非上場会社の先代経営者が、保有するその会社の株式を後継者(後継の経営者)に贈与して、その経営権を委譲しその事業を承継・継続させる場合、その贈与が一定の要件を満たせば、後継者が取得した株式に係る贈与税について、原則として贈与税の申告から5年間、後継者がその株式を保有し続け代表者としてその事業を継続する限り、先代経営者の死亡等までその納税が猶予され、その死亡等により免除されます(租税特別措置法(措法)70条の7の5)。これが贈与税の特例措置です。

(2)特例経営承継受贈者の要件の検討

贈与税の特例措置の適用を受けるためには、その株式の贈与を受けた後継者が「特例経営承継受贈者」に該当する必要があります。その特例経営承継受贈者に該当するための要件の一つに、「贈与の時において、受贈者(=長男)が有する対象会社の株式に係る議決権の数が、その特別関係者のいずれの者(その時点で、他に新・事業承継税制の納税猶予を受ける個人がいる場合はその人を除きます。)の有する議決権の数以上であること」(以下「筆頭株主要件」)があります(措法70条の7の5第2項6号ニ(1)・本紙№737参照)。
ご質問の場合、甲さんから長男へのX社株式の贈与の時において、同社の議決権を最も多く有するのは議決権総数の60%を有し、法人としての特別関係者であるY社であり、長男は筆頭株主要件を満たすことができません(注)。

(注)受贈者の特別関係者には、受贈者の親族等の特殊な関係のある個人のほか、受贈者の一定の支配関係下にある会社も含まれます(措法施行令40条の8の5第14項、40条の8第11項)。受贈者である長男が特例経営承継受贈者に該当するためには、「(新・事業承継税制の納税猶予を受ける個人を除いた)特別関係者のいずれの者」に対しても、"単独で"筆頭株主である必要があります。

Y社は、上記の特別関係者に当たり、甲さんから長男への贈与の時点でX社の議決権総数の60%を有しています。このため、長男は筆頭株主要件を満たさないことになります。
したがって、平成30年に甲さんから長男が贈与により取得したX社株式については、長男が「特例経営承継受贈者」に該当しないことから、贈与税の特例措置の適用を受けることができません。

[ 山崎 信義 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。