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No.731

平成30年税制改正より・・・法人税法上の適格合併等の範囲の拡大

1. 従来の適格合併の要件

法人税法上では、法人の合併のうち、次の3つのパターンのものを適格合併としています。
① その合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係があること、又は、合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後にその同一の者と合併法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていること
② ①の場合を除き、その合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある、又は、合併前に被合併法人と合併法人との間に同一の者による支配関係があり、かつ、合併後にその同一の者と合併法人との間にその同一の者による支配関係が継続することが見込まれている合併のうち、次に掲げる要件の全てを満たすもの

(1)合併に係る被合併法人の合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が合併後に合併に係る合併法人の業務(この合併後に行われる適格合併によりこの合併の被合併法人のこの合併前に行う主要な事業がその後の適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その後の適格合併に係る合併法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。
(注)ここで「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併の直前に被合併法人の合併前に行う事業の事業に現に従事する者を意味します。

(2)合併に係る被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後にその合併に係る合併法人(その合併後に行われる適格合併によりその主要な事業がその適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、その適格合併に係る合併法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
③ ①と②以外の合併で、その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの

2. 適格合併の範囲を拡大する改正内容(法人税法2条12号の8ロ。本年4月1日以降の合併に適用)

今回の税制改正で上記1の3類型のうち、支配関係があることを大前提とする②の類型が拡大されました。②の適格合併に当たるために、その(1)と(2)の両方を満たすべきことは同じですが、それぞれの要件が緩和されました。(1)は、被合併法人の合併の直前の従業者の総数のおおむね80%以上の数の者が、合併法人の業務に従事することを求めていましたが、今回の改正により、そのおおむね80%以上の数の者が、従事する業務が、合併法人自体のそれに限らず、合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務でもよくなりました。つまり、改正前は、被合併法人の80%の従業者が合併法人自体の業務に従事する(合併法人に雇用されて働く)必要がありましたが、改正後は合併法人に限らず、その100%子会社の業務に従事してもよいことになりました。おおむね80%以上の数の者の半数が合併法人、残りの半数が100%子会社の業務に従事することになる場合やその全数が100%子会社の業務に従事することになる場合も(1)の要件は満たされる、ということです。合併法人側のグループ経営の体制に配慮した、より柔軟な要件となりました。

また、(2)の被合併法人の主要な事業の引継ぎについても、同様に、同事業を引き継ぐのが、合併法人だけでなく、その合併法人との間に完全支配関係がある法人(端的な例は100%子会社)でもよいことになりました。
以上により、被合併法人の従業者とその主要な事業のすべてを合併法人の100%子会社に引き継ぐような場合でも、②の適格要件を満たすことになります。 

3. 適格分割(法人税法2条12の11ロ)などでも同様の改正(本年4月1日の分割に適用)が行われていること

適格分割の3類型のうち、分割法人と分割承継法人の間に支配関係がある(又はそれが継続すると見込まれる)ことを前提にした類型の要件のなかに、適格合併の場合の上記1の②の(1)と(2)に対応したほぼ同じ要件があります。改正前は、分割対象となる事業に従事する従業者のおおむね80%が分割承継法人の業務に従事するべきこと、分割事業が分割承継法人において引き続き行われるべきこととなっていましたが、今回の改正で、上記従業者が従事する業務は分割承継法人のそれに限らず、それと完全支配関係がある法人の業務でもよいこととなり、分割事業を引き継いで行う法人も分割承継法人と完全支配関係がある法人でもよいこととされました。適格現物出資についても同様の改正が行われています。   

[ 亀山 孝之 ]

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