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TACTニュース
No.713

特定の資産の買換えの場合の課税の特例・・買換資産を「事業の用に供した」とは

1.はじめに

表題の特例は、法人税法の特例である租税特別措置法65条の7の制度で、買換資産をその取得の日から1年以内に「事業の用に供した(又は供する見込みである)」ことは、その適用のための要件の一つです。同条1項が挙げる特定の譲渡資産(棚卸資産は除く。以下同じ。) を譲渡して、その譲渡の日を含む事業年度に、その譲渡資産のタイプごとに同項の各号が定める要件を満たす資産(買換資産)を取得して、その買換資産をその取得の日から一年以内に、その法人の事業の用に供したとき(又は供する見込みであるとき)に、当該買換資産につき、〔譲渡資産の譲渡の対価の額のうち買換資産の取得価額に達するまでの金額×その譲渡の差益割合(=譲渡益÷譲渡対価) 〕の80%相当額まで、その帳簿価額を確定した決算で減額する等の経理(一般に圧縮記帳と呼ばれます。) をすれば、その減額等した金額を、その譲渡をした事業年度の損金の額に算入する、というものです。
その損金算入によって、譲渡資産の譲渡益の最大8割までが相殺され課税されなくなります。10年以上保有している土地や建物を譲渡して300㎡以上の一定の用途の土地や建物等を買換資産として取得する場合などでかなり利用されています。

2. 買換資産として土地を取得し、そこに新たに建物を建てる場合の「事業の用に供した」ことの判定

次に、買換資産が土地である場合に、その土地を「事業の用に供した」ことの判定法、つまり、どのような状態になったときに事業の用に供したとみるかを整理します。
このことについては、まず、租税特別措置法通達65の7(2)-1が買換資産をその法人の事業の用に供した(という状態である)ことの意義を定めていて、建物等を建てる土地を事業の用に供したかどうかの判定について、「土地の上に当該法人の建物、構築物等の建設等をする場合においても、当該建物、構築物等が当該法人の事業の用に供されないときにおける当該土地は、当該法人の事業の用に供したものに該当しない。」としています。
ポイントは、その土地上に建設する建物が、その(土地を取得した)法人の事業の用に供されていないと、その敷地で買換資産である土地も事業の用に供したとはみないということです。ということは、建物が建設中であるときは、その土地は事業の用に供したものとなっていない、また、その建物の完成予定時期まではその土地を事業の用に供する見込みとはいえない、ということになります。ただ、その取扱いを補完・修正する通達として、いつの時点で「事業の用に供した」とみるかに係る同通達65の7(2)-2があり、その(1)は次のように定めています。
「法人が、買換資産を当該法人の事業の用に供した日は、次に掲げるものは次により判定する。

(1) 土地等については、その使用の状況に応じ、それぞれ次に定める日による。

イ 新たに建物、構築物等の敷地の用に供するものは、当該建物、構築物等を当該法人の事業の用に供した日(当該建物、構築物等の建設等に着手した日から3年以内に建設等を完了して当該法人の事業の用に供することが確実であると認められる場合には、その建設等に着手した日)
ロ 既に建物、構築物等の存するものは、当該建物、構築物等を当該法人の事業の用に供した日(当該建 物、構築物等が当該土地等の取得の日前から当該法人の事業の用に供されており、かつ、引き続きその用に供されるものであるときは、当該土地等の取得の日)
ハ 建物、構築物等の施設を要しないものは、当該土地等をそのものの本来の目的のために使用を開始した日 (以下略)」

上記イの下線を引いたカッコ書き部分は、先に挙げた65の7(2)-1の通達を事実上修正しているように思われます。それは、買換資産の土地の上に建てる建物等(前記のとおり「建設等に着手した日から3年以内に建設等を完了して当該法人の事業の用に供することが確実であると認められる」という条件が付きますが、そう高いハードルとは思えません。) の建設等に着手した日(注:その日には当然完成していないので、建物が事業の用に供されていません) を「事業の用に供した」日とみる、としているからです。
以上により、2の表題の場合の「事業の用に供した」ことの判定は、通常は「建物等の建設等に着手した日」によってよい、ということになります。

[ 亀山 孝之 ]

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