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TACTニュース
No.690

取引相場のない株式の相続税法上の評価の改正~会社規模の判定基準の見直し~

1.非上場会社株式(取引相場のない株式)の相続税法上の評価の基本的な考え方

相続税及び贈与税の計算の基礎となる財産の評価を定める財産評価基本通達(財基通)は、取引相場のない株式の評価につき、原則、「従業員数」「直前期末以前1年間の取引金額」「簿価総資産価額」の三要素により、評価する会社を大会社・中会社・小会社に区分し(財基通178)、それぞれの規模区分別に適用できる評価方法を次の通りに定めています(財基通179)。

(1)大会社の株式は、類似業種比準価額方式による評価を原則としますが、純資産価額方式も選択できます。
(2)小会社の株式は、純資産価額方式による評価を原則としますが、「類似業種比準価額×0.50 +1株当たり純資産価額×0.50」の算式により求めた価額を評価額として選択することもできます。
(3)大会社と小会社の中間にある中会社の株式は、「類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額×(1-L)」の算式による評価を原則としますが、純資産価額方式も選択できます。なお上記算式中のLは、中会社をさらに規模に応じて3つに区分し、規模の大きい順に0.90、0.75又は0.60となります。

2.会社規模の判定基準の見直し

(1)見直し後の会社規模の判定基準

平成29年4月27日付財基通の一部改正により、同年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式の評価について、会社規模の判定基準が見直されました。新しい判定基準は下表の通りです。

◎従業員数が70人以上の場合はそれだけで大会社となり、69人以下の場合はさらに下表で判断します。

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《【1】《1》と《2》のいずれか下位の区分を採用します。》 ⇒ 《【2】【1】と《3》のいずれか上位の区分により判定。》

[会社規模の判定例]サービス業、総資産価額15億円、従業員数35人、年間取引金額10億円の会社の場合
【1】《1》と《2》のいずれか下位の区分⇒中会社(中)。【2】《3》による区分⇒中会社(大)。∴会社規模は中会社(大)

(2)見直しの背景・根拠(出所:国税庁『「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて』)

大会社は上場会社に匹敵するような規模の会社を予定しており、また、中会社(大)は大会社(上場会社に匹敵)に準じる会社を予定していますが、国税庁の上記『通達等のあらましについて』における背景等の説明によれば、マザースなど新興市場が創設され、上場審査基準も見直しが行われている結果、上場会社の実体にも変化が生じていることから、規模区分の各基準を全体の傾向として下げる方向で見直すことにした、ということです。

(3)見直し後の会社規模判定基準の留意点

今回の見直しにより年間取引金額の基準や従業員数の基準が緩和され、これらの基準では大会社及び中会社に該当する会社が増加します。一方、総資産価額の基準は、上表の②と③の業種の会社が大会社に該当する場合の総資産価額が15億円(見直し前10億円)以上に引き上げられます(上表の下線部参照)。したがって、見直し前は大会社に該当した会社が、見直し後は大会社に該当しない場合がありますので注意が必要です(担当:山崎信義)。

[ 山崎 信義 ]

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