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No.681

平成22年に取得した土地を29年に譲渡した場合の長期譲渡所得の1,000万円特別控除

【問】

私は、平成29年3月に都内A市に所在する土地Xと土地Yを譲渡しました。土地Xは亡父から平成13年に相続により取得した遊休地で、A市の収用事業の用地として4,000万円で買取られたものです。土地Yは、平成22年5月に㈱Bより当時の時価5,000万円で取得し、貸駐車場として使用してきたものを、平成29年3月にC㈱に時価6,000万円で譲渡したものです。この譲渡により、土地Xは譲渡益3,800万円、土地Yは譲渡益1,000万円が生じています。
土地Xの譲渡については、適用要件を満たすことから、租税特別措置法(措法)33条の4の収用等の場合の5,000万円特別控除の適用を受けるつもりですが、土地Yの譲渡についても、譲渡益にかかる所得税を軽減できる特例の適用が認められないでしょうか。なお、私と私の親族は土地Yの購入先の㈱Bの株主ではなく、同社と特別の関係にありません。また、私は土地Y以外に、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地を取得したことはなく、平成29年中に土地Xと土地Y以外の土地等の譲渡をするつもりはありません。

【回答】

1.結論

あなたは、平成22年中に取得した土地等を平成29年(平成28年以降)に譲渡しているので、下記2の他の要件をすべて満たすことにより、特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除(以下「1,000万円特別控除」)の適用が認められ、その土地等に係る譲渡所得の金額から最大1,000万円を控除することができます(措法35条の2)。

2.1,000万円特別控除の適用要件

(1)個人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に国内にある土地又は土地に関する権利(以下「土地等」)を取得し、平成21年に取得した土地等は平成27年以降に、平成22年に取得した土地等は平成28年以降にそれぞれ譲渡すること(措法35条の2第1項)。

(2)(1)の土地等は、親子や夫婦、生計を一にする親族、特殊な関係のある法人等、特別な間柄にある者から取得したものではないこと(同)。

(3)(1)の土地等は、相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済及び所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと(同)。

(4)その年中に譲渡をした1,000万円特別控除の対象となる土地等の全部又は一部につき、収用等に伴い代替資産を取得した場合の特例(措法33条)、特定の居住用財産の買換えの場合の特例(同36条の2)、特定の事業用資産の買換えの場合の特例(同37条)その他の特例(33条の2、33条の3、36条の5、37条の4、37条の7又は37条の9の4)の適用を受けていないこと(同)。
なお、1,000万円特別控除の対象外の土地等の譲渡につき、例えば特定の事業用資産の買換えの場合の特例の適用を受けていた場合であっても、この要件を満たさないことにはなりません

(5)(1)の譲渡した土地等について、固定資産の交換の場合の特例(所得税法58条)、収用等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)、特定の事業用資産の買換えの場合の特例(同37条)、居住用財産の譲渡の場合の3,000万円特別控除(同35条)その他の特例(同34条、34条の2又は34条3)の適用を受けていないこと(同35条の2第2項)。

(6)原則として、この特例を受ける旨を記載し、かつ、土地等の登記事項証明書や土地等を取得したときの売買契約書の写しなどで、譲渡した土地等が平成21年又は平成22年に取得されたものであることを明らかにする書類を添付した確定申告書を提出すること(同第3項)。

3.ご質問の内容の上記2の適用要件へのあてはめ

土地Yは2(1)~(5)の要件を全て満たしていますので、あなたが(6)の要件を満たす平成29年分の確定申告書を提出すれば、1,000万円特別控除の適用を受けることができます。
なお、同一年に1,000万円特別控除や収用等の場合の5,000万円特別控除を含む6種類の譲渡所得の特別控除のうち、2以上の控除の適用を受けることにより特別控除額の合計額が5,000万円を超える場合は、その年の特別控除は控除額を通じて5,000万円で頭打ちとされます(措法36条)。あなたの場合、平成29年中に土地Xと土地Y以外の土地等の譲渡をしないとのことですから、上記2(6)の確定申告書を提出することにより、土地Xに係る収用等の場合の特別控除3,800万円と、土地Yに係る1,000万円特別控除の合計4,800万円の控除が認められ、平成29年分の長期譲渡所得の金額はゼロとなります。

[ 山崎 信義 ]

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