News
TACTニュース
No.680

平成29年度税制改正大綱より 外国子会社合算税制の総合的見直し(その2)

1.はじめに

小紙NO.677は「外国子会社合算税制の総合的見直し(その1)」でした。今回は(その2)で、外国関係会社(NO.677の2(1)参照)に当たる外国の会社のうち、一定の受動的な所得についてのみ合算課税される会社とその合算される所得の範囲と計算法などを説明します。

2.外国関係会社のうち、一定の受動的な所得についてのみ合算課税される会社及びその合算所得の範囲

今回の改正では、現行の合算税制の適用除外の4基準(租税特別措置法66条の6第3項の事業基準、実体基準、管理支配基準、その主たる事業の種類に応じ非関連者基準又は所在地国基準)が一部緩和される予定です。その改正後の4基準(経済活動基準) をすべて満たす会社が、一定の受動的な所得についてのみ合算課税される会社とされます(改正後の部分合算課税制度)。
注:4基準のいずれかを満たさない外国関係会社は、会社単位で(つまり、その全所得が)合算課税される対象となりえます(NO.677の2(2)参照)。
「一定の受動的所得」を具体的に挙げると①利子、②配当等、③有価証券の貸付の対価、④有価証券の譲渡損益、⑤デリバティブ取引の損益、⑥外国為替差損益、⑦ ①から⑥までの所得を生じる資産から生ずるそれらに類する所得、⑧有形固定資産の貸付の対価、⑨無形固定資産の使用料⑩無形固定資産の譲渡損益が挙げられていて、いずれも、資産の利用・運用等による所得です。そして、11個目(最後)の合算所得として⑪「外国関係会社のその事業年度の利益の額から、前述の①~⑨の所得の金額と所得控除額を控除した残額」が挙げられています。⑪において、利益の額からの控除項目である「所得控除額」とは、その外国関係会社の総資産の額、減価償却累計額及び人件費の額の合計額の50%で計算します。この計算で⑪にプラスの利益が残ることは多くないと思われます。

3.2の会社で合算される所得金額の計算法

表題の所得金額を「部分適用対象金額」といい、その金額は次のとおり2区分・2段階で計算します。

区分1:上記2の①~③、⑧、⑨及び⑪の所得の金額の合計額。
(⑪は「残額」となっていますので、マイナスになることはなく最低でもゼロです。その他の項目もその性格上、それに係る費用の額を控除してもほとんどはプラスなると思われますから、区分1は基本的にプラスです。)

区分2:上記2の④~⑦と⑩の所得の金額の合計額。
(区分2は、その構成項目の性格上マイナスになる場合がありますが、その場合はゼロとされます。)
その事業年度の区分1+区分2で、その事業年度の部分適用対象金額が計算されます。そのような計算がされる結果、上記2の①~③、⑧、⑨は部分適用対象金額に必ず残るということが見込まれます。
また、区分2の計算においては、その外国関係会社のその事業年度の開始の日の前7年以内に開始した各事業年度において生じた区分2の金額のマイナスの額(欠損金額)は、その事業年度(単年度)の区分2の金額がプラスとなるとき、そのプラスの金額の範囲で控除されます(その控除がされる場合でも、控除後のその事業年度の区分2の金額は最低でもゼロでマイナスになることはありません。)。
なお、外国関係会社が一定の金融子会社等に当たる場合は、部分合算課税制度の対象となる所得の範囲とそれに基づく部分適用対象金額の計算法が上記と異なりますが、ここでは割愛します。

4.改正後の部分合算課税制度の適用除外

改正後の部分合算課税制度でも、租税回避の蓋然性の度合いが低いと認められる次のいずれかに当たる場合については、納税者の事務負担等を考慮し、同制度の適用を免除する取扱いが定められます。現行の同制度の適用除外制度がやや緩くなるよう改正されます。

イ 外国関係会社のその事業年度の租税負担割合が20%以上である場合
ロ その事業年度における部分適用対象金額に係る収入金額が2千万円以下(現行では1千万円以下)である場合。
ハ その事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額(分母)のうちにその事業年度の部分適用対象金額(分子)の占める割合が5%以下である場合。

現行の適用除外の制度では、上記ロ又はハによる場合について、確定申告書にこれらの規定の適用がある旨を記載した書面を添付し、かつ、その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存していることが要件とされていますが、改正後はその要件は廃止されます。(担当:亀山 孝之)

[ 亀山 孝之 ]

当サイトに掲載の文章等の無断転載を禁じます。
全ての著作権は税理士法人タクトコンサルティングに帰属します。
無断使用、無断転載が発覚した場合は法的措置をとらせていただきます。