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No.674

平成28年度改正:贈与税の配偶者控除に係る添付書類の見直し

1.贈与税の配偶者控除の概要

贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、専ら居住の用に供する家屋やその敷地等(以下、「居住用不動産」)又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合において、一定の要件を満たすときは、暦年課税の贈与税の計算上、基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで課税価格から控除できる制度をいいます。
贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、次の要件を満たすことが必要です(相続税法(相法)21条の6第1項、第2項)。

(1)婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間(相法施行令4条の6、以下「婚姻期間」)が20年以上の夫婦間で贈与が行われたこと。
(2)配偶者から贈与された財産が、贈与を受けた個人が住むための国内の居住用不動産であること、又は居住用不動産を取得するための金銭であること。
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
(4)同じ配偶者からの贈与について、過去に贈与税の配偶者控除の適用を受けたことがないこと。
(5)贈与税の申告書に居住用不動産の登記事項証明書など一定の書類を添付すること。

2.被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から財産の贈与を受けていた場合の相続税及び贈与税の取扱い

標題の場合には、原則として、その贈与を受けた財産について相続税の課税価格に加算される(相法19条1項)ため、これに対応する措置として贈与税はかかりません(同21条の2第4項)。
しかし、個人が相続開始の年に婚姻期間が20年以上である被相続人から、贈与により取得した居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭(以下「居住用不動産等」)について、過去にその被相続人からの贈与について配偶者控除を受けていないときは、その居住用不動産等のうち、贈与税の配偶者控除があるものと仮定して控除される部分(「特定贈与財産」)は、相続税の課税価格に加算されず、相続税の対象となりません(相法19条第1項かっこ書)。

相続税の対象とされない特定贈与財産について、受贈者は贈与税の申告をする必要がありますが、その特定資産について贈与税の配偶者控除の適用要件を満たしている場合には、その適用を受けることができます(同21条の6第2項)。

3.平成28年度改正の内容

(1)贈与税の配偶者控除に係る添付書類等の見直し
贈与税の配偶者控除の適用を受ける場合、平成28年度税制改正前では、居住用不動産の登記事項証明書を申告書に添付する必要がありました。ただし、この贈与は夫婦間の財産移転であることから、所有権の移転登記を行っていない事例や、改正前の規定では所有権の移転登記後の登記事項証明書の添付までは求められるものになっていなかったことにより、贈与者名義のままの登記事項証明書が添付される事例があり、居住用不動産の取得の事実を確認できない事例もありました。
そこで平成28年度税制改正により、この添付書類が、(いつの時点のものか明らかでない)居住用不動産の登記事項証明書から、所有権の移転登記後の登記事項証明書や贈与契約書等、その居住用不動産を配偶者が取得したことを証する書類に改められました(相法施行規則9条2号、財務省「平成28年度税制改正の解説」546頁)。

(2)特定贈与財産を贈与税の課税価格に算入する場合の申告書添付書類
上記2のとおり特定贈与財産が贈与税の課税価格に算入され、相続税の課税価格に算入されない場合における、相続税の申告書に添付する書類等についても、上記にあわせて同様の改正が行われました(相法施行規則1条の5第2項)。

(3)適用関係
上記(1)の改正は、平成28年1月1日以後に贈与、相続又は遺贈により取得する財産に係る贈与税について適用されます(改正相法施行規則附則2条第2項、第1項)。

(4)贈与契約書を添付する場合の留意点
上記(1)より、受贈者が居住用不動産を取得したことを証する書類として贈与契約書を添付する場合には、贈与の事実及び成立の日を明確にするため、その契約書に公証人による確定日付の付与を受けておいた方が無難です。

[ 山崎 信義 ]

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