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公正証書で二男に生前贈与した土地が相続財産になるとされた事例

2026.05.12

親が子への不動産の生前贈与を公正証書で契約し、名義変更の時期を遅らせても、贈与税を節税することは困難なようです。
贈与の契約時に所有権が移転し、贈与税の課税できる期間は過ぎたと納税者が主張しても、所有権移転は実質、名義変更時だと税務署に認定される事例が複数積みあがっているからです。

最近でも、二男と公正証書で不動産の贈与契約した親が亡くなり、いったんその遺産は未分割として相続税申告を済ませた後、遺産分割の調停の際、贈与を受けていた二男が初めて他の相続人に問題の公正証書による不動産の贈与があったことを打ち明けて、名義変更した事例がありました。
相続人らは、贈与されていた親の不動産を相続財産から除いて相続税を減額する更正の請求を税務署に出したところ、税務署が、相続開始前に所有権移転の効果は生じていないとして請求を認めなかったことから、他の相続人(三男)が不服を申し立てて争いになったものです(国税不服審判所令和 7年9月3日裁決)。

この事案の争点は、問題の不動産の所有権が相続の開始前に公正証書に基づき相続人である二男に移転したと認められるか否かでした。

審理のポイントになったのは、①土地の贈与を約した公正証書の作成後の土地の登記の状況、②公正証書作成後の被相続人の行動でした。

これらを明らかにすることで、贈与契約の実態を把握できると国税不服審判所(以下、審判所という。)が考えたからです。

①については、平成27年10月14日に作られた公正証書では平成28年3月中に不動産を引き渡し、所有権移転登記を行うとされていたが、次男が手続きをしたのは、「平成27年10月14日贈与」を原因として令和6年7月16日付の受付の登記である。

②については、次のとおり。
イ、被相続人は、令和 2年に、問題の不動産の建物の3室について、自らを賃貸人として、各賃借人との間で賃貸借契約の締結又は更新をしていた。
ロ、被相続人は、平成26年分ないし令和2年分の所得税等申告では、問題の不動産に係る不動産所得の収入金額に 計上していた。
ハ、被相続人は、遅くとも平成26年から相続が開始されるまでの間、問題の不動産に係る固定資産税等を自ら負担し、納付していた。

こうしたことを踏まえ審判所は、被相続人が公正証書作成後も問題の不動産の所有者として振舞っており、被相続人はそのような認識であったことをうかがわせると指摘しました。
一方、二男が調停の期日で初めて他の相続人に対して公正証書の存在と内容を明らかにしていることについて、審判所は二男が公正証書により問題の不動産の所有権を取得していると思っていたなら、相続税の申告をするまでに、公正証書の内容等を明らかにするはずだが、申告では問題の不動産も相続財産に含めていたのは、問題の不動産の所有権を取得した者の行動として不自然と指摘しています。

以上からの結論として審判所は、公正証書による契約の当事者が「被相続人が問題の不動産の所有権を有していると認識し、その認識を前提に行動していたと認めるのが相当」としました。

このことから、契約の実態は問題の不動産を引き渡し、かつ、所有権移転登記手続を行うことをもって、所有権を移転する旨を合意したものと認定しました。

最終的に審判所は「不動産の所有権は、相続の開始前に公正証書に基づき二男に移転したとは認められない」と判断しています。

[ 遠藤 純一 ]

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