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No.976

速報!令和8年度税制改正案

~与党税制改正大綱に盛り込まれた資産課税を中心とする改正案の主な内容は以下のとおり~

【相続税・贈与税】《「令和8年度税制改正大綱」P82、65~66、15、65、66》

1.貸付用不動産の相続税評価の見直し【創設】

(1)被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額*1により評価される。

*1上記の「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に、地価の変動等を考慮して計算した価額の80%相当額によって評価することができる。

(2)不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産は、その取得時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額*2により評価される。

*2上記の「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」については、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額により評価することができる。ただし、これらに該当するものがないと認められる場合は、上記(1)に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)される。

(注)上記(1)と(2)の改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用される。ただし上記(1)の改正は、その改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には、適用されない。

2.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度【延長】

(1)特例承継計画の提出期限が、令和9年9月30日まで1年6ヶ月延長される。
(2)本措置の適用期限到来後のあり方については、その適用状況や課税の公平性等を踏まえて多角的な検討が行われ、令和9年度税制改正において結論が得られる。

3.直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置【廃止】

令和8年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期間が延長されず、終了となる。
令和8年3月31日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用できる。

4.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等【延長・見直し】

所要の見直しを行った上で、適用期限が3年延長される。

【消費税】《「令和8年度税制改正大綱」P123》

1.適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置【創設・延長】

(1)個人事業者である適格請求書発行事業者の令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間(免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間に限る。)について、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とすることができる。なお、この適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記する。

(2)上記(1)の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに、その翌課税期間について簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度の適用が認められる。

(注) 現行の適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の適用を受けた適格請求書発行事業者も、上記と同様の措置を講じられ、令和8年10月1日以後に終了する課税期間から本措置を適用できる。

2.適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置【延長・見直し】

(1)本経過措置における控除可能割合について、次に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とされる。

①令和8年10月1日から令和10年9月30日まで: 70%
②令和10年10月1日から令和12年9月30日まで:50%
③令和12年10月1日から令和13年9月30日まで:30%

(2)一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で1億円(現行:10億円)を超える場合は、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置の適用が認められない。

(注) 上記の改正は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用される。

【住宅・土地税制(所得税・法人税)】《「令和8年度税制改正大綱」P34~37、110~111》

1.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除【延長・拡充】

(1)住宅の取得等をして令和8年~令和12年の間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間は次の通りとされる。
①認定住宅等の新築等及び認定住宅等である既存(中古)住宅の取得の場合

認定住宅等の区分 居住年 借入限度額  控除率 控除期間
認定住宅 令和8年~12年 新築:4,500万円
(特例対象個人*:5,000万円)
既存住宅:3,500万円
(同:4,500万円)
0.7% 13年
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円
(特例対象個人:4,500万円)
省エネ基準適合住宅 新築:令和8年・9年
既存住宅:令和8年~12年
2,000万円
(特例対象個人:3,000万円)

②①以外の場合(①以外の既存住宅の取得等又は住宅の増改築等)

居住年 借入限度額 控除率 控除期間
令和8年~12年 2,000万円 0.7% 10年

*「特例対象個人」とは、個人で年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は、年齢19歳未満の扶養親族を有する者をいう。

 
(2)個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である居住用家屋も、本特例の適用ができる。ただし、その者の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については適用されない。

2.長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えの場合の課税の特例の見直し【延長・見直し】

買換資産のうち、建物及びその附属設備を特定施設の用に供される建物及びその附属設備に、構築物を特定施設に係る事業の遂行上必要なものに、それぞれ限定された上、適用期限が令和11年3月31日まで3年延長される。

【個人所得課税】《令和8年度税制改正大綱」P55、55~56》

1.特定の基準所得金額の課税の特例(ミニマムタックス)【見直し】

令和9年分以後の所得税について、特例対象者を個人でその者のその年分の基準所得金額が1億6,500万円(現行:3億3,000万円)を超えるものとされるとともに、税率が30%(現行:22.5%)に引き上げられる。
改正後は、[(その年分の基準所得金額-1億6,500万円)×30%]の算式で計算した金額が、その年分の基準所得税額を超える場合に、その超える金額に相当する所得税が課される。

2.青色申告特別控除【拡充・見直し】

(1)65万円控除について、一定の要件を満たす電磁的記録により帳簿の保存等を行い、確定申告書等をe-Taxを使用して提出している者は、控除額が75万円に引き上げられる。
(2)10万円控除について、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者で取引を簡易な簿記の方法により記録しているもののうち、その年の前々年分のこれら所得の収入金額が1,000万円を超えるものは、対象から除外される。

(注)上記の改正は、令和9年分以後の所得税について適用される。

【法人税】《令和8年度税制改正大綱」P86、86~88》

1.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例【延長・拡充】

対象となる減価償却資産の取得価額が、40万円未満(現行:30 万円未満)に引き上げられる(所得税についても同様)

2.特定生産性向上設備等投資促進税制【創設】

青色申告書の提出法人が、生産等設備を構成する一定の規模以上の機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物及びソフトウェアで、産業競争力強化法の改正法の施行日(以下「改正法施行日」)から令和11年3月31日までの間に経済産業大臣の確認を受けた特定生産性向上設備等*1に該当するもの(以下「特定機械装置等」)を取得等し、これを国内にあるその法人の事業の用(貸付の用を除く。)に供した場合*2は、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定機械装置等につき①普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却(即時償却)と、②その取得価額の7%(建物、建物附属設備及び構築物は4%) の税額控除との選択適用ができる。ただし、税額控除の控除税額は当期の法人税額の10%が上限とされ、控除限度超過額の3年間の繰越し*3ができる。

*1「特定生産性向上設備等」とは、産業競争力強化法の生産性向上設備等のうち、その導入に係る投資計画に記載された生産等設備を構成する生産性向上設備等の取得価額の合計額が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であること等の一定の基準に適合することについて、経済産業大臣の確認を受けたものをいう。
*2確認を受けた日から5年を経過する日までの間に特定機械装置等を取得等し、事業の用に供した場合に限られる。
*3繰越控除は、改正法施行日から令和11年3月31日までの間に一定の経済産業大臣の確認を受けたことが要件。

[ 山崎 信義 ]

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