【Q&A】複数代表者のうちの一人から非上場株式を相続した場合の相続税の納税猶予の特例の適用
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【問】 (株)A(A社)の代表取締役の甲は、令和7年8月に亡くなりました。A社では、甲の代表取締役就任から死亡による退任までの間、継続して同社の発行済株式(すべて議決権あり)の40%を甲、残りの60%を甲の兄で同じく代表取締役の乙が保有していました。 |
【回答】
1.結論
甲が後述の「特例被相続人」に該当しないことから、Bが甲から相続により取得したA社株式は、相続税の特例措置の適用を受けることができません。
2.解説
(1)特例被相続人の意義
①基本的な考え方
本問の場合、甲からA社株式を相続で取得したBが相続税の特例措置の適用を受けるためには、甲が「特例被相続人」に該当する必要があります。「特例被相続人」は、措法施行令40条の8の6第1項(以下「相続税政令」)1号又は2号の場合の区分に応じ、それぞれに定める者となります。この政令で1号は「2号に掲げる場合以外の場合」と定められているため、まず甲からBへのA社株式の相続による取得が「2号に掲げる場合」に該当するかどうか検討します。
②「相続税政令2号に掲げる場合」の要件
標題の「相続税政令2号に掲げる場合」に該当するのは、甲の相続開始の直前において次のイ~ハのいずれかの者がいるときです。
イ.A社株式につき、贈与税の特例措置、相続税の特例措置又はみなし相続の特例措置の適用を受けている者
ロ.贈与税の特例措置に係る「特例贈与者」のうち、措法施行令40条の8の5第1項1号に定める者(本問の場合、A社の代表権を有していた個人で、同号の定める一定の要件を満たすものをいう。)から、贈与税の特例措置の適用に係る贈与によりA社株式を取得している者(イに掲げる者を除く。)
ハ.相続税政令1号に定める者(A社の代表権を有していた個人で、同号の定める一定の要件を満たすものをいう。)から、相続税の特例措置に係る相続または遺贈によりA社会社を取得している者(イに掲げる者を除く)。
③「相続税政令1号に掲げる場合」の要件
甲からBへのA社株式の相続による取得が「相続税政令1号に掲げる場合」に該当するのは、相続開始直前に次のイとロを全て満たすときです。
イ.甲がA社の代表権を有していた期間内のいずれかの時および相続開始の直前において、甲及び[甲と一定の特別の関係のある個人(親族等)や、甲と一定の特別の関係のある法人(甲がその総議決権数の50%超を有する会社等。以下あわせて「特別関係者」という。) ]の有するA社株式の議決権の数の合計が、A社の総議決権数の50%超であること。
ロ.甲がA社の代表権を有していた期間内のいずれかの時、及びその相続開始の直前において、甲が有するA社株式に係る議決権の数が、甲の特別関係者のいずれの者の有する議決権の数をも下回らないこと。
(2)結論
Bが甲からA社株式を相続する直前において(1)②イ~ハの要件を満たす者がいない(【問】下線部参照)ので、「相続税政令2号に掲げる場合」には該当しません。また甲はA社の代表取締役を務めた期間中、同社の総議決権数の40%を保有するにとどまり、同期間中に兄の乙が保有した議決権数(同60%)を下回ることから、③ロの要件を満たさず、「相続税政令1号に掲げる場合」にも該当しません。よって甲は特例被相続人には該当せず、Bが甲から相続したA社株式は相続税の特例措置の適用を受けることができません。(
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