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No.880

令和4年度税制改正大綱:住宅借入金等特別控除の主な改正

1、はじめに

12月10日に公表された与党の令和4年度税制改正大綱では、住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除という。)の見直しが提示されています。今回は、主な改正点を見ていきます。

2、新築一般住宅への適用

大綱によると、新築住宅の区分がこれまで認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)と認定以外の住宅(一般住宅)の区分でしたが、改正後は、後記の認定住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅(以下、認定住宅等という。)のくくりと、それ以外の住宅(一般住宅:住宅の取得等が居住用家屋の新築、居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得又は宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋)とされます。新築の一般住宅を対象とする住宅ローン控除改正の概要は次の通りです。
表1 一般住宅(新築)

所得要件 合計所得金額2,000万円以下
最低床面積 50㎡以上(40㎡以上※1)
控除率 0.7%
居住年 2022・2023 2024・2025
控除対象借入限度額 3,000万円 2,000万円※2
控除期間 13年 10年
最大控除額 273万円 140万円

表1の※1の40㎡以上で住宅ローン控除が適用できるのは、その年の合計所得金額が1,000万円以下である場合とされます。
また、※2の2,000万円の借入限度額での控除が認められるのは、2023年までに新築の建築確認を受けたもので2024年・2025年に居住した場合に限られます。
同時に、次の所定の一般住宅は、省エネ基準を満たさない限り住宅ローン控除の適用はできなくなるということです。
ア、2024年以後に建築確認を受ける一般住宅。ただし登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前のものを除く
イ、建築確認を受けない住宅の用に供する家屋で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降の一般住宅

国土交通省によると、ここでの省エネ基準とは、後記の省エネ基準適合住宅の基準と同じであるとのことで、省エネ性能として断熱等性能等級4、かつ、一次エネルギー消費量等級4を見込んでいるようです。そうすると住宅ローン控除適用対象のスタンダードとしての一般の住宅は、後記の省エネ基準適合住宅へ底上げされることになります。

3、新築の認定住宅等の改正

新築の認定住宅等の改正は次の通りです。
表2 認定住宅等(新築)

控除期間 13年
控除率 0.7%
控除対象借入限度額
居住年 2022・2023 2024・2025
認定住宅 5,000 万円(455万円) 4,500 万円(409,5万円)
ZEH水準省エネ住宅 4,500 万円(409,5万円) 3,500 万円(318,5万円)
省エネ基準適合住宅 4,000 万円(364万円) 3,000 万円(273万円)

※カッコ内は最大控除額。

4、中古の住宅等の改正

中古の住宅に対する住宅ローン控除の改正は次の通りです。
表3 中古住宅

控除期間 10年
控除率 0.7%
控除対象借入限度額
居住年 2022・2023
認定住宅 3,000万円(210万円)
認定住宅等以外 2,000万円(140万円)

5、控除額の大まかな目安

最近の住宅ローン金利が低いこともあって、住宅ローン控除率も引下げられた影響で、控除額は全体的に、小粒化しています。給与400万円から600万円の方(配偶者控除なし)が、2022年に以下のローンで、利息1.5%、35年元利均等返済(4月返済開始)、ボーナス返済なしで、新築の一般住宅を購入して住宅ローン控除を受ける場合の控除額の目安は次の通りです。
表4 控除額の目安(単位:万円)

給与/借入 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000
400 153.4 191.55 214.47 221.26 221.26
500 153.4 191.74 230.09 272.67 273
600 153.4 191.74 230.09 272.67 273

今回の改正は、最近の金利動向を踏まえ、控除率の引下げにより逆ザヤが解消されて、節税色が弱まり、住宅取得をアシストするという、制度の本旨に立ち返ったものと言えるのかもしれません。

[ 遠藤 純一 ]

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