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2017.12.11No.716 所得税法において、不動産の貸付けが事業として行われている場合とそれ以外の場合

カテゴリー:不動産と税務

1はじめに

不動産などの貸付けによる所得=不動産所得(所得税法26条)は、その不動産貸付けが事業として行われているか否かによって、 所得金額の計算上の取扱いが異なる場合があります。その主なものは次のとおりです(同法51条57条64条、租税特別措置法25条の2)。

(1)賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、不動産の貸付けが事業として行われている場合は、その全額を必要経費に算入するが、それ以外の場合は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入される。
(2)賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産貸付けが事業として行われている場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入するが、それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直す。
(3)青色申告の事業専従者給与又は白色申告の事業専従者控除については、不動産貸付けが事業として行われている場合は適用があるが、それ以外の場合には適用がない。
(4)青色申告特別控除については、不動産貸付けが事業として行われている場合は、正規の簿記の原則による記帳をおこなうなどの一定の要件を満たすことにより最高65万円が控除を適用できるが、それ以外の場合は最高10万円となる。

2で不動産の貸し付けの「事業」性の判断の在り方を整理します。

2所得税法における「事業」性の判断

不動産の貸付けが事業に当たるか否かについては、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって実質的に判断する、ということが原則です。ただし、建物の貸し付けについては、①アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上②独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上のいずれかに当たれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます(所得税法基本通達26-9)。
それでは、例えば土地の賃貸の場合など、それ例外の不動産所得一般についての「事業」性の判定はどのように考えたらよいでしょうか。
不動産所得の「事業」性についての東京地裁平成7年6月30日判決は、所得税法の「事業」概念について、要旨「所得税法は、一定の事業概念を前提としているものと解されるが、所得税法上、事業所得についての定義規定はあるものの、事業によって生ずる所得のすべてを事業所得とはしておらず、事業の種類に応じて事業所得、不動産所得又は山林所得に分類し・・・、所得税法上、事業の意義自体については、一般的な定義規定を置いていない。その事業概念は、社会通念に従ってこれを判断するほかはない。」と判示しています。そして、「不動産所得を生ずべき事業といえるか否かは、営利性・有償性の有無、継続性・反復性の有無、自己の危険と計算における企業遂行性の有無、その取引に費やした精神的肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断されるべきものと解さざるをえない。」としています。
建物の貸し付けのように形式的な基準がない土地の貸し付けの場合、上記裁判例で示された各判断ポイント(①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無・・)に、〇又は×をつけ、〇と×のどちらが優勢かにより総合的に判定するしかないと思われます。
以下私見を述べます。それだけでは生活できない収入レベルの土地等の貸し付けで、他に生活のための本業を持っているような場合は、「事業」には当たらない、となるでしょう。逆に、土地の貸し付けが1か所だけだからといって、建物の貸し付けの5棟or10室基準を持ち出して1か所というだけで「事業」に当たらないということにはならないと思います。1か所だけの土地の貸し付けでも、その規模と場所によって、5棟or10室より多額の収入を得る場合があることは容易に想定されますし、市場価値・利用価値の高い土地を、誰にどういう条件で貸すかを慎重に検討して実行すること、その賃貸収入の運用(再投資等)を検討することはまさに事業(活動)というべきと思われます。貸し付けの実行後、建物の貸し付けに比べて物件の維持・管理の手間が少ないことは、建物と違って、貸し付け・使用による減価が生じないという土地の性質に由来するものに過ぎず、それを重視して事業性を否定することは不適当ではないかと思われます。

[ 亀山 孝之 ]

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