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2017.08.28No.702 平成29年度改正:非上場株式等に係る相続税の納税猶予における雇用確保要件の計算の見直し

カテゴリー:事業承継税制改正

1.非上場株式等に係る相続税の納税猶予・免除制度

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に規定する「中小企業者」に該当する会社で、同法による都道府県知事の認定を受けたもの(「認定承継会社」)の株式等につき、その会社の代表権を有していた被相続人(先代経営者)から相続又は遺贈により取得した個人が、その先代経営者の後継者として「経営承継相続人等」(租税特別措置法(措法)70条の7の2第2項3号)に当たる場合、経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、その非上場株式等(一定の部分に限ります。)の課税価格の80%に対応する額の納税が、経営承継相続人等の死亡の日まで猶予されます(同第1項)。納税猶予税額は、その経営承継相続人等の死亡等の事由が生じた場合、原則、その全部又は一部が免除されます(同第16項)。
経営承継相続人等が、(1)の相続税の納税猶予税額が免除される時までに、下記2(1)の雇用確保要件を満たさなくなった等の一定の事由(全部で17あります。)が生じた場合、原則として納税猶予の期限が確定(猶予の打切り)し、納税猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があります(同第3項ほか)。

2.雇用確保要件の計算の見直し

(1)雇用確保要件とは

雇用確保要件は、中小企業における雇用確保という政策目的のため、認定承継会社における経営承継期間(*1)中の常時使用従業員(*2)の数の平均値が、先代経営者の相続開始時の常時使用従業員の数の8割以上の数を保つことを(いいかえれば、相続開始時の常時使用従業員の数の減少が2割以下であることを)、上記1の相続税の納税猶予を継続して認める要件として求めるものです。よって、雇用確保要件を満たさない場合には、その経営承継期間の末日から2ヶ月を経過する日が納税猶予の期限となり、同日までに納税猶予税額の全部又は一部を納付する必要があります(同第3項)。
(*1)「経営承継期間」とは、原則として先代経営者の非上場株式に係る相続税の申告書の提出期限の翌日から同日以後5年を経過する日までの期間をいいます。ただし、5年を経過する前にその相続に係る経営承継相続人等が死亡した場合には、経営承継相続人等の死亡の日がその期間の末日となります(同第2項6号)
(*2)「常時使用従業員」とは,経営承継会社の従業員のうち,厚生年金保険または健康保険の被保険者に該当する人などをいいます(措法施行規則23条の10第5項、同23条の9第4項)。
雇用確保要件を満たしているかどうかは、次の算式により判定します(措法70条の7の2第3項2号)。

《算式》

経営承継期間内の各第1種基準日(*3)における常時使用従業員の数の合計÷経営承継期間の末日において経営承継期間内に含まれる第1種基準日の数(*4)≧相続開始時における常時使用従業員の数×80% 

(参考:財務省「平成29年度税制改正の解説」P617)
(*3)「第1種基準日」とは、経営承継期間内における、納税猶予に係る相続税の申告書の提出期限の翌日から1年を経過するごとの日をいいます  (同第2項7号イ)。
(*4)経営承継期間が5年の場合は、「5」となります。

(2)平成29年度税制改正のあらまし

平成29年度改正により、上記2(1)の《算式》中の下線部の[相続開始時における常時使用従業員の数×80%]に1人に満たない端数がある場合、これを切捨て(改正前は「切上げ」)ることとされました。ただし、相続開始時の常時使用従業員の数が1人の場合には1人とされます(措法施行令40条の8の2第28項)。

例えば、相続税の納税猶予の適用を受ける場合において、先代経営者の相続開始時における認定承継会社の常時使用従業員の数が4人のときの[相続開始時の常時使用従業員の数×80%]の計算は、次の通りです。

①改正前:4人×80%=3.2人⇒4人
したがって、経営承継期間中は常時使用従業員を平均して4人確保することが必要でした。
②改正後:4人×80%=3.2人⇒3人
したがって、経営承継期間中は常時使用従業員を平均して3人確保すればよいことになります。
今回の改正により、相続開始時に従業員が少ない小規模事業者の雇用確保要件が緩和され、相続税の納税猶予制度の利用件数の増加が期待されています。
なお、非上場株式等に係る贈与税の納税猶予・免除制度(措法70条の7)においても、上記と同様の改正が行なわれています(措法施行令40条の8第22項)。 

3.適用時期

上記2(2)の改正は、平成29年1月1日以降に相続等により取得した非上場株式等につき適用されます(改正法附則88条第13項、10項)。

[ 山崎 信義 ]

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